36話 プライマルヒロインズ・コード。
36話 プライマルヒロインズ・コード。
「領域外GISネットワークにハックして、FDMコールを再設定。デジタルマイクホワイトホール経由で、ISライブラリを五次元オブジェクト化して、特異ニューラルネットワークと接続。……うん、この神字ってシステムはええなぁ。まるで、あたしらのために用意されるようなツール。もしかしたら、これを創ったんは『先祖の誰かしら』かな?」
真なる『狂気のマッドサイエンティスト』のような目で、コスモゾーンと戦っているレイナ。
その瞳の強度だけで言えば、本気を出している時のトウシと、さほど変わらない。
「コスモゾーンの管理区域に合わせて変数を設定……仮想GISロック解除アダプタを繋いで、領域外ネットワークの外部装置を直接操作……オートバグ処理が鬱陶しいから、そっちを先に対処……ISRAIの判定アルゴリズムを解析……おっと、抜け道が山ほどあるやないか。ザルやなぁ。まあ、あたしクラスやないと、ここまでくるん無理やけど……これ、もしかして、あたしの存在そのものを、バックドア化した感じ? んー……まあ、その辺は、ようわからんから、考えんでええわ。で、えっと、このまま、惑星エネルギー運用法を再構築……指向推定パラメータを更新して……もう一回、再起動すれば……うん、これで問題なくビッグデータと連動できる……あとは、周囲のISL波形と同調してカメレオン化潜伏する方法で、ウェルノウンポートを流れるキュビットコールを盗聴すれば……ん? なんで迎撃システムが発動したん? ISRAIの判定範囲外の行動のはず……あっ……『前』にも誰か、この方法でハックをかけたんか……それで、自動迎撃システムの方のISRAIが学習した感じか……ったく、どこのアホやねん……まあ、このレベルを実行可能なんは、トウシかザンクぐらいやけど」
そこで、レイナは、一度、トウシをチラっと睨む。
『お察しの通り』みたいな顔をしているトウシに、
レイナは、一度、中指を立てて、
「……あのボケ、あとで、一発シバく……後処理くらい、ちゃんとしとけ、カス」
と、宣言してから、
また、宇宙の法則とにらめっこを開始。
バキバキの目で、先へ、先へと進んでいく狂気。
そんな彼女を、センは黙って見守った。
見守ったというか、見守るしかなかった。
人間を超えた叡智と処理能力で、
欲しい情報を、あらかた奪い取ったレイナは、心の中で、
(どうやら、あたしにも、『プライマルヒロインズ・コード』が課せられとるようやな……『田中家にかけられとる呪い』と『あたし個人にかけられとる呪い』の二つ。……『田中家』にかけられた『呪い』の大半は、『シグレ』が担っとるっぽい。だから、あの女、あんなアホやったんか。『猿と大差ないレベルまで知性が堕ちる呪い』とか、えぐいな。で、えー……んー……厄介な縛りはシグレが大半をもっていっとるけど、全部ってわけやないっぽいな。あたし固有の呪いは、普通にあたしを縛り付けとる。……あたしを縛る呪いは……えっと……ああ、シグレほどではないけど、『知性レベルに制限』が入っとるんか……本来の、あたしの知性レベルは……今の倍……呪いを解くことが出来たら、それだけで、トウシに匹敵できる……あとは、努力に努力を重ねることで、トウシ以上になれるか……うん。まあ、そのぐらいやないと、神王の妻なんて名乗れんしな)




