27話 ギャルのパンティおくれ。
27話 ギャルのパンティおくれ。
怒りをあらわにする神の王。
……バッチバチの神気を魅せつけられて、その場にいる田中は、全員が目を丸くして、普通に背筋を凍らせた。
ここにバカは一人もいない。だから、理解できた。
自分たちが、今、全世界で最も危ない猛獣の前に座っているということ。
……事前に言った通り、ここにいる全員、トウシから、神の王に関するデータをもらっている。
だから、センエースに関して、最低限の理解はしていた。
しかし、そんなもんは、教科書で織田信長の歴史を勉強したようなものでしかない。
本物の戦国武将を前にした時の威圧感を、教科書で学ぶことなど不可能。
『センエースは高潔で慈悲深い神』……教科書の文字だけで、それを理解した気になり、そして、だからこそ、どこかでナメていた。
武力はハンパないが、知性は微妙な脳筋神。
己には厳しいが、他人には甘い、世界の管理システム。
……ある程度『年齢を重ねた田中』なら、『相手は賢くないかもしれないが、神様だから、怒らせないようにしよう』という、『大人の理性』が働く。
しかし、『親類以外は、チンパンジーしかいねぇわ、この世界』と、世界をナメている『若い世代の田中』は、『相手が神だとか知らんし! しょせんは、ただの頭悪い元日本人だろ? 田中家最強! ウェーイ!』という、いわゆる『若さゆえの過ち』の中で溺れている。
この辺の、『若さゆえのあれこれ』と『根本的な知性の程度』に関連性は薄い。
情報処理能力が高いのと、感情・自尊心・虚栄心をコントロールできるか否かに関しては、全く別のスキルが要求される。
IQだけはめちゃくちゃ高いサイコパスの猟奇犯罪者など、世界中探せば、いくらでもいる。
『賢い者は理知的である』というのが成立するなら、東大上位卒の官僚に支配される日本が汚職と天下りにまみれているわけがない。
『頭の回転速度』と『人生における賢明さ』はイコールではない。
もちろん、田中家の面々は、『真に賢い』ので、人生経験を積めば、いずれは、その辺の賢明さも獲得できるだろう。
……だが、今は、時期が悪かった。
若い時代に、センエースに出会い、そして、ナメてしまった。
その代償は、払わなければいけない。
センは、威圧感を加速させつつ、巻き舌で、
「どうした……何を黙っている? どうせ、まだ、要求はあるだろ? 俺を解剖したいとか、携帯ドラゴンが欲しいとか、ギャルのパンティおくれとかよぉ……おい、どうした。笑えよ、天才ども。場を和ませようと、ピエロがギャグかましてやってんだから、腹抱えて笑えや」
誰も笑えない。
老熟した賢明さを持ち合わせていない『若い世代』も、現状を理解する知性は十二分に備わっている。
ゆえに、ブルブルと震える事しか出来ない。
……イス田中は、プライドが高い。
『みっともない姿をさらすぐらいなら死んだ方がマシ』と思っている者も、この中には結構いる(※全員ではない)。
しかし、そんな連中も、『ガチオーラを発揮している神の王』を前にすれば、ただの矮小な虫ケラになるしかない。




