22話 無敵となった記念に消してやろうか、こんな世界。
22話 無敵となった記念に消してやろうか、こんな世界。
「くく……俺はまた一つ完璧に近づいてしまった。貴様を超える日も近いだろう」
「とっくに超えとるというか、現状、足元にも及んでへんねんけど、まあええわ。あと、今回の『異世界に行ける行けへん』に件に関しては、『完璧に近づいた』っていうか、『普通になった』ってだけやけどな。上位の神なら、誰でもできる『自由に世界を移動できる許可』が、これまでは、なぜか、おりんかったというだけやから」
永久閃光神化への覚醒により、
これまでセンエースを縛っていた、
『転生以外の手段で、異世界に移動することが出来ない』
という縛りが完全に消え去った。
そこで、センは、
遥かなる高みから、下界を見下ろしたまま、
「で? お前の親戚、集まった?」
「ああ。驚くことに欠席は2人だけ。ほかは全員集合。ワシの予想では、大半が『自己中な理由』で欠席すると思っとったんやけど……信じられんことに、ほぼ全員、きっちり集まったわ。欠席したんは、ここにおらんシグレと、田中家の頭おかしい代表『セラ姉』だけ」
シグレは、おそらく原初の世界にいる。
『おそらく』という推定に過ぎないのは、現状、原初の世界に行くことはおろか、メッセージを飛ばすことすら出来ないから。
「シグレなんかいらん。あいつ、バカじゃねぇか。我ら、偉大なる天才一族・大いなる田中家の面汚しよ」
「お前、田中家ちゃうけどな。あと、社会的な視点では、アカコーに行ったあいつの方が、東高にいったお前より賢い」
「……っ……だ、だから、第一アルファは嫌いなんだ。学歴信仰とかいう、謎の宗教が蔓延している糞以下のゴミ溜め。……無敵となった記念に、消してやろうか、こんな世界」
「神の王とは思えんセリフ……いや、一周回って、神様っぽいか?」
「ところで、セラは、なんで欠席した? 入院でもしてんのか?」
「違う。ただ自由なだけ。セラ姉は、性格が終わっとるから、例外やと思ってくれ。あれは、親戚の中でも、特にイってもうてる、ほんまもんのキ〇ガイやから」
どうでもいい会話をしながら、
センとトウシは、奥の会議室へと向かう。
広い会議室では、『正式にイスを名に持つ天才たち』が、それぞれ、スマホいじり、パソコン操作、読書、筋トレなど、好き勝手なことをしていたが、センが、室内に入ってきたことで、全員が手を止めて、センに視線を送る。
その中の一人、この中で最も年長と思われる老人(男)が、
ゆっくりと、席を立ち、
「お待ちしておりました……命の王よ」
と、丁寧なあいさつをいれる。
「私は、田中・イス・霊呂と申します」
98歳、超後期高齢男性。
職業、物理学者。
天才プロゲーマー『田中・イス・奈楽』の曽祖父。
非常に理知的で理性的で厳格で、感情を表に出すことがほとんどないスーパー博士だが、『数年前に寿命で普通に亡くなった妻』の事を想い、毎晩メソメソ泣いている。
妻に対する執着は異常だが、子にも孫にも一切興味がなく、ひ孫がプロゲーマーになったと聞いた時も『知らんがな』としか思わなかった。
興味のある分野とパートナー以外はどうでもいい、という、典型的な田中。
「全ての神の頂点たる尊き方にお会いできたこと。一族を代表し、心から――」
と、ガッツリ目の『定型文スピーチ』が始まりそうだったので、
センは、それを、右手で遮って、
「挨拶、いらない。礼儀もいらない。俺は、あんたらの知恵を借りたいだけだから」




