14話 Sさんの慟哭。
14話目ぇえ!!
14話 Sさんの慟哭。
……以下、とある牢獄にて、とある『みすぼらしい罪人(Sさん)』と『熱狂的な信者である神父』のディスカッション。
「センエースとかいう、あの変態は、確かに、生物としては『強い』存在だとは思う。これまで、ずっと、色々と頑張った……まあ、それは認めよう。アホみたいに積み重ねてきて……相応の力を手に入れた。それは認めるにやぶさかじゃない。まあ、才能がないから、『かけた時間と比べて、手に入れた力が小さい』って気がしないでもないが……もっと強くなってもいいんじゃないかなぁ、と思わなくもないし……トウシあたりが同じ時間を積んだら、たぶん、俺……いや、『あの変態』なんかよりも、よっぽど強くなるんだろうなぁ、とか、そんなことも考えなくもないが……しかし、まあ、頑張ったという一点だけは認めてやる。しかし、それだけ! それ以上、無駄に無理して崇め奉る必要はない」
「君は……ひどいな。流石、一級犯罪者。思考が完全におかしくなっている」
「違うね。俺がやばく見えている、この世界がやばいんだ」
「主は、世界を救ってくださったのだぞ。命をかけて。……いや、もう、そんなレベルではない。魂の全てを削りに削って、我々、弱き命のために、全てを賭してくださった。その想いに対して、感謝の念を伝えることも出来ないどころか……『変態』などという言葉で貶めるとは……君は、酷すぎる。あまた存在する犯罪者の中でも、君は最下層にいると言っていいだろう」
「変態は、あいつ自身が、自分に対して頻繁に使う言葉じゃねぇか。蝉原の映像を見たんだからわかるだろ? センエースは、自分の事を、センエース・クレイジーサイコボッチと名乗っている変態だ」
「……主は、『精神的な高み』の『最果て』に到られた御方。その『人類を超越した高潔さ』は、『山の頂点に到っていながら、まだ、そこを麓と考え、一心不乱に、より高みを目指して上り続ける』という『無限の旅路』を可能とする原動力。実質的な肉体の強さだけではなく、精神性においても完璧な王であり英雄。それがセンエース神帝陛下」
「違うもん! センエースはただの馬鹿だもん! 俺は詳しいんだもん!」
「君は現実を見た方がいい。妄想の中にとらわれてもいいことは何もない」
「それは、全部、まるっと、俺がお前らに対して言いたい悲鳴なんだがなぁ」
「罪人よ。主の愛を受け入れなさい。そうすれば、少しは、君の穢れた心も救われるでしょう」
「現実が見えている俺の心は、自由で豊かで救われている。お前らの方こそ気づけよ。センエースはただの兵器だ。外敵を殺すための道具に過ぎない。ただの武器を、尊いだのなんだのと、無意味に崇めるのは、ただただ異常で愚かな行為だと、いい加減、気づけ」
「救えない男だ……君は、死刑を経ても、何も理解に届かないのだろう。一つだけ、君が救われる方法を教えておく。主を愛しなさい。それだけが、君の魂を救う、たった一つの手段」




