12話 センエースに対する想い。
12話目ぇぇ!!
12話 センエースに対する想い。
「ありえるんだよ! なんだ、ありえませんって! どういうことだ?!」
「仮に、その提案を受け入れた場合、師は、どんな場面であろうと『自分が死ぬことはありえないから』という無敵根性理論を盾にして、どれだけ危機的状況であろうと、『問題ないから、約束通り俺の命令を聞け。俺の後ろに隠れてろ。面倒は俺が全部片付ける』と、どれだけズタボロになろうと、無限に自爆特攻を継続することでしょう。それを黙って見ているなど……ありえません」
「っうぐ……ふ、ふふ……よ、よくぞ見破った、明智くん」
「平熱マンです、師よ。この世で最も尊き主よ、永遠の輝きを放つ王よ、すべての命の父よ」
「悪くない読みだ……が、コクと深みが足りんな。自爆特攻をするだけじゃない。最終的には、全ての敵を問題なくぶっ殺す。そして、完璧な『めでたしめでたし』の中、ファンファーレが鳴り響いて理想のエンディングに突入する。俺が前線に立てば、待ち望んだ最終回だけがデフォルトになる。しかし、お前らが前に出ると、半端な死傷者が出て、トゥルーに届かなくなる。というわけで、今後、厄介ごとは俺に任せろ。俺のトゥルーへの道を邪魔することは許されない。わかったな、平」
「ありえません」
「無限にありえねぇんだなぁあ! お前にとって、俺の意見ってのはよぉお!!」
★
分水嶺の蝉原厄介編を経て、
第二~九アルファにおける『命のあり方』に大きな変化が生じた。
『センエースに対して祈る時間』が増えた。
自分たちを支えている神、世界を包み込む光の尊さを正しく理解し、
今後、『自分たちが命を捧げるべき信仰対象を』正しく認識する。
老人も子供も関係なく、『大半』の命が、心に正しくセンエースを抱く。
ゼノリカの一部だけではなく、多くの一般的な命が狂信者となった世界。
ゼノリカの面々にとっては理想郷……いや、この程度を理想郷とは呼べないか。
現状は、『しかるべき状態』に過ぎない。
理想郷はもっと先にある。
全ての命がセンエースを愛し、
全ての命がセンエースに包まれて、
完璧なるセンエース至上主義社会となった楽園。
それこそが、ゼノリカにとっての理想郷。
今は、まだ、その理想にはほど遠い。
――閃光祭などを通じて、
『感情の暴走に身を任せる』だけではなく、
『理性の面』でも、正式に、『センエースの尊さを理解した』ことで、
民衆のセンエースに対する感謝と愛情の想いが膨らんでいく。
今まで、主を信じていなかったものは、自分たちがいかに愚かな存在だったかと、自分に対して怒りを覚える。
その怒りの感情を煮詰めて、深い信仰心に変えることで、センエースをより深く重たく愛そうとする民衆。
多くの命が『センエースを愛すること』に没頭しているが、しかし、全員ではない。
第二~第九アルファに生きる者たちは、皆、記号ではなく、『一個の人間』なので、画一的に、全員が全員、センエースに対して同じ感情を抱いたわけではない。
『暴力的なほど深くセンエースを愛する者』が大多数だが、中には、冷めた視点をもつ者もいる。




