11話 センエースの命令などカスでございます。
11話目ぇえ!!
11話 センエースの命令などカスでございます。
「有事の際には、『高潔すぎる師』が『望まぬ献身』に至る場合もございましょう」
「やめてくれない? そういうこと。ほんとイヤなんだけど」
「承知しております」
「承知してんのかぁい。じゃあ、やっぱり、今、俺がくらってんのは、高度な嫌がらせってことかい! なにしてくれてんだ、お前ら」
「――ゼノリカが『命をかけなければ果たせぬ難事』を前にした時、尊き師が、自らの命を盾にしてでも、我らを止めようとすることが予測されます。根本的な話、不確定な問題を前にした際、師はいつも、自らをカナリアにしようとなされる。我々はそれを望まない。師のために命を使うこと。それが我々ゼノリカにとって最大の喜び」
「……だから、もう俺の『許可』とか『お伺い』はスルーして、自分たちで勝手に色々やっちゃうことにしました、てへっ。ってことか?」
「ありていに言えば、そういうことでございます」
「そんな組織があってたまるか! ゼノリカは俺が一番上! つまり、俺の命令が絶対! ここだけは歪んじゃいけねぇだろうが! 俺の言っていること、何か間違っているか! 栄えあるゼノリカの天上、三至天帝が一人、平熱マン聖剣至天帝様よぉ!」
「はい、間違ってございます、尊き師よ。あなた様からの命令など、あなた様の果てなく尊き命と比べればカスにございます」
「ヤベェよ、こいつ! 上司の命令を、カスって言ったぁ! 終わり、終わり! もう、この組織、終わりだよ! おつかれさまでした! 解散! また、どこかでお会いしましょう!」
「師がご存命である限り、ゼノリカは永久に不滅です。そして、師が害されることはありえない。我々が、命を賭してお守りしますゆえ」
そこで、センは、ググッと奥歯をかみしめ、
表情を、全力シリアスなソレに整えてから、
自身の声に、ありったけの重厚感を込めて、
「……平熱マンよ。神界の深層を統べる暴君にしてゼノリカの絶対的支配者である俺が、その権利を最大限行使して正式に命じる。俺の命を最優先にしたいって気持ちは、よくわかった。100京歩譲って、受け入れよう。ただし、そのスタンスは『俺が確実に死ぬかもしれん』という場面に限定しろ。基本的には、俺の命令を最優先事項におけ。極限状態以外の場面では、俺の命令が最優先だ。いいな、平熱マンよ」
「ありえません」
「ありえるんだよ! なんだ、ありえませんって! どういうことだ?! どの状況においても、俺の話を聞く気はゼロってことか?! じゃあ、もう二度と、俺のことを王って呼ぶなよ! 今後、俺は、無所属の風来坊! よって好き勝手やらせてもらう! 誰のいうことも聞かない! 死のうが死にまいが自己責任! 俺は俺のワガママのためだけに、手前の命を酷使無双させてもらう! いいな!」
「師が確実に死ぬかもしれない……そのような極限状態に陥るまで手をこまねいているなど、ありえません。それに、仮に、その提案を受け入れた場合、師は、どんな場面であろうと『自分が死ぬことはありえないから』という無敵根性理論を盾にして、どれだけ危機的状況であろうと、『問題ないから、約束通り俺の命令を聞け。俺の後ろに隠れてろ。面倒は俺が全部片付ける』と、どれだけズタボロになろうと、無限に自爆特攻を継続することでしょう。それを黙って見ているなど……ありえません」




