8話 ウザさで心臓が止まりそう。
8話目ぇ!
8話 ウザさで心臓が止まりそう。
「そんな『メンヘラの核分裂』みたいな『地獄の祭り』だったんかい。『蝉原をぶっとばしてくれてありがとう。これからも決戦兵器としてがんばれ、しくよろ』がメインのポジティブで明るい祭りじゃねぇの? 俺、絶対にそれだと思っていたんだが」
「もちろん、それも目的の一つです。師に感謝すること。師に尽くすこと。師のために命の全てを捧げる覚悟を示すこと。果て無く尊き師に注ぐ想いの結晶……その全てが目的です」
「しんどい、しんどい、しんどい……あ、ダメだ……ウザさで、心臓が止まりそう……」
本音がダダ漏れになるセン。
センは、心底しんどそうな顔で、
「ちょ、もう、正式に命令するわ。俺のためって理由では何もするんじゃねぇ。俺のために命を尽くすとかありえん。お前らが俺を守るんじゃない。俺がお前らを守るんだ」
「それほどの激烈な尊さと美しさを、常時、狂おしいほどに魅せつけ続けておきながら、我々の忠誠だけを拒むとは。まったく理解に苦しみますね。言動が一致しておりませんよ」
「ちゃうねん、平さん。正味、『どっちが親か』っていう、それだけの話でしかないねん。頼むから理解してくれ。もう土下座するから。この通りだから」
「――『守るべきもののためであれば、なんでもできる』という、その尊きお覚悟。師は、どのような状況であろうと、常に無上の光と共にあられる。もし、我々をどうしても突き放したいのであれば、少しは、『命が有する醜さの一つ』でも披露してみてはいかがでしょう? さすれば、我々の意識にも、何かしらの変動があるかもしれませんよ」
「ずっと魅せつけてんじゃん! 無様なところも、カッコ悪いところも! 山ほど見せつけてきたよ! もう、ケツの穴見られるよりしんどい恥を、散々さらしてきたんだよ! だから、ちょっとは本当の俺を見てくれよ! お前ら全員、俺に対して、思春期の男子がアイドルに抱いているアレの何倍もの幻想を抱いてんの! 『アイドルうんこしない』級か、あるいはそれ以上のやばさを煌めかせてんの! それをちゃんと理解・自覚・認識・把握しようぜ! ほら、よく見ろ! お前のイケオジっぷりとは比べものにならない、この、出来の悪いツラを! このゴッワゴワの最低な髪質を! 腫れぼったい目を! くすんだ肌色を! ルックス、才能、性格、センス、情緒、家庭環境、友人関係、パートナー関係、全てにおいて逆パーフェクトな存在! それが俺だ! ひどいな、俺! こんな悲しいこと、言わせんじゃねぇ!」
などと、センがワーキャーと騒いでいると、
そこで、百済のメンバーの一人が、
平熱マンの背後に、音もなく現れて、
一度、センに対して、最大級の礼儀を尽くしてから、平の耳元で、何かを報告すると、最後に、またセンに対して最大級の礼儀をつくしてから、闇の中へと溶けていった。
センがダルそうな顔で、
「どしたん?」
と尋ねると、平が渋い顔で、
「どうやら、『師の記憶を拒んだ89名のテロリスト』の行方が、まったく掴めない模様です。一人残らず、徹底的に処罰してやろうと思っていたのですが――」
「やめとけぇ。絶対にやめとけぇ。てかテロリストてぇ。ただ、俺の記憶を拒んだだけやろがい。むしろ、俺からすれば救世主レベルなんだが」




