7話 メンヘラ核分裂祭。
7話目ぇ!
7話 メンヘラ核分裂祭。
「ゼノリカの天上天下を代表し、ここに、改めて、お詫びを申し上げます。この上なく尊き師の命を奪い続けるという、ありえざる深き業……我々はこの――」
「俺、もう、何千回も言ったよな? その『どうでもいいこと』を忘れないんだったら、どんな方法を使ってでも、『お前らの記憶』から『俺』を消すぞって。もし、それが本当に嫌だってんなら、二度と言うな」
ここまでの間に、ゼノリカの天上天下は、みな、それぞれ、個別に、センへ、幾度となく、『死の罰』を懇願している。
その度に、センは『うるせぇ、忘れろ。忘れねぇなら、俺が本気で動き出すぞ。俺がガチンコの本気で行けば、いつかは必ず、記憶を奪う方法を見つけ出すぞ』と脅しつけることで、どうにか黙らせてきた。
みな、センが、『配下の死』を望んでいないことはわかっているし、『200兆ループの業』を蒸し返されることを、誰よりもセンが一番嫌がっているということを理解している。
しかし、それでも、どうしても、
胸に強いシコリとして残ってしまっているから、
死の罰を懇願せずにはいられないというワガママ。
王を殺すなど、
一回だけでも、あり得ない蛮行。
万死に値する、何よりの大罪。
その大罪を、
ゼノリカの天上天下は、
天文学的数字で犯している。
百とか千とかではない。
万でも億でもない。
200兆年の間、ずっと、ずっと、ずっと、何度も、何度も、何度も――
数えるだけで人生が終わってしまうほど、
ゼノリカの面々は、センを殺し続けてきた。
正直言って、もう『罪の意識』も、すごいレベルで麻痺っている。
『感じていない』のではなく、『歯医者で受ける麻酔を何十億倍もしんどくしたかのよう』な、『えげつないほど強い麻痺』で脳がイカれそう。
ゆえに、『自分が何をしたか』を正しく理解できている者は一人もいない。
『大事な王を200兆年、殺し続けた』
……ここまでくると、もう『壮大さの桁』があまりにも違いすぎて、いまいち、実感を持てない。
わからないのだ。
全く。
自分の罪のシルエットが見えない。
『自分がどれだけエグいことをしでかしたのか』――それが、まったく、正しく認識できない。
もちろん『とてつもない大罪を犯した』と言うことはわかっている。
死ねと言われれば、秒で自殺する。
なんだったら、自殺させてほしいぐらい、罪の意識に苛まれている。
――それは事実だが、己の罪の重さの具体性は、やはり、誰も理解できていない。
罪が重すぎて理解しようとしても仕切れない。
超銀河団の具体的なグラム数を問われている気分。
大雑把な予想すらつけられない。
――実は、『その事実』が何より辛かったりもする。
もうどうしたらいいのか分からず、ずっと、心の奥が悶々としっぱなし。
『だからこそ、今回の閃光祭が開催された』といっても、実のところは過言ではない。
……皆、示したいのだ。
とにかく、ちょっとでも。
『主のために、この命を使い尽くす』という覚悟を。
主は、配下の死を求めない。
それは理解できている。
ならば、決死の働きで、王に尽くそう。
この身が朽ち果てても、なお、王のために尽くすこと。
もし、王の身に危険が迫れば、わずかの迷いもなく、身を盾にして死ぬこと。
これより先、己の命は、一欠片たりとも残さず全て王に捧げる。
それ以外の使い道はありえない。
――そんな、頭おかしい覚悟を、大々的に、正式に示すこと。
それが、この閃光祭の、最大の目的。
「そんな『メンヘラの核分裂』みたいな『地獄の祭り』だったんかい。『蝉原をぶっとばしてくれてありがとう。これからも決戦兵器としてがんばれ、しくよろ』がメインのポジティブで明るい祭りじゃねぇの? 俺、絶対にそれだと思っていたんだが」




