6話 閃光祭。
6話 閃光祭。
二週間ぶっ続けで行われる『閃光祭』の始まりは、太陽が沈みかけた夕刻から。
羅衣服や仙浄衣と呼ばれる神御衣を着た十席の面々によって、
裏ダンジョンゼノリカの桜華堂から、
『センエースの英魂の一部』が込められた究極超神器『崇御霊』を、
25基の神輿へと遷す、
――そんな、極めて神聖な儀式が、どこまでも厳格に執り行われる。
『十席』の面々による、腹の底に響く警蹕と、厳かな御神楽の音色が、ピンと張り詰めた夕闇に響き渡るなか、錦蓋によって守られた崇御霊が、過剰なほど慇懃に動座される。
ゼノリカの天上天下、合わせて数百名の列が、赤々と燃える幻想的な松明の灯りによって導かれ、滞りなく最高位神事が遂行されていく。
その、あまりにも厳かがすぎる光景を前にして、
この祭りの主役であるセンは、しんどそうに、
「……なにしてんの、これ」
疑問を口にすると、センの隣を陣取っている平熱マンが、
「師の尊さの一部を纏った神輿を担ぎ、世界各地の龍脈あふれる聖地を練り歩くことで、世界の災厄、穢れを清めると言うのが、『二番目』の目的。三番目の目的は、師の尊さを、より強く、より正しく、民衆に理解させること。四番目の目的は、師のオーラに少しでも触れることで、輝く明日への活力とすること。五番目の目的は――」
「目的が全部で何個あるか教えてくれる?」
「大まかな目的だけで38個です、この上なく尊き師よ、全ての頂点たる命の王よ、我ら全てを包み込む大いなる父よ、すべての絶望を切り裂く運命の光よ」
「あらゆる意味で、全てを理解した。真理を得たと言ってもいい。と言うわけで、二度と、『この仰々しい珍事の目的』は言わなくていい。そして、俺に対し、『この上なく尊い』系のアレコレは、二度と言わなくていい。ものごっつダルいから。俺が尊かったことは一度もない」
「刃で切り付けられれば血が噴きだすもの。それと同じく、溢れ出る想いを止めることなど不可能でございます。はてなく美しき師よ」
「流血はオーラで止血できる。と言うわけで、今後は、『尊いがどう』とかいうアホな寝言をほざきそうになったら、口にオーラを集中させて押し黙るように。これ、神の王の命令ね。てか、もう神法に記載しようか。そうだな、うん、そうしよう。それがいい。『センエースのことは、基本、いい感じにシカトしなければいけない。なんだったら、ちょっと小馬鹿にしなければいけない』――これを、ゼノリカの絶対的なルールとする」
などと、『とにかく少しでも己のポジションを良くしよう』と奮闘するセン。
そんなセンに、平は、
「閃光祭の『一番の目的』を、ここでお伝えさせていただきたい」
そう言いながら、センの横で、綺麗な土下座を決めて、
「ゼノリカの天上天下を代表し、ここに、改めて、お詫びを申し上げます。この上なく尊き師の命を奪い続けるという、ありえざる深き業……我々はこの――」
「俺、もう、何千回も言ったよな? その『どうでもいいこと』を忘れないんだったら、どんな方法を使ってでも、『お前らの記憶』から『俺』を消すぞって。もし、それが本当に嫌だってんなら、二度と言うな」




