96話 『世界大会優勝のプロゲーマー』VS『普通にゲームが下手なお母さん』。
96話 『世界大会優勝のプロゲーマー』VS『普通にゲームが下手なお母さん』。
「セン君。今の俺なら、そう簡単には壊れないから、思いっきり来てくれていいよ。遠慮はいらない。君の、『底なしの優しさ』を俺に提示する必要はない」
「俺の優しさはだいぶ極小で有限だし、そもそもの話、お前にマイナス以外の感情を提示する気は微塵もねぇよ。ツッコむのダルいから、ボケまくるのやめてくれる?」
その言葉が、お遊びの最後。
グンっと、空間を圧縮するような勢いで、蝉原は時空を駆け抜ける。
素晴らしい速度でセンとの距離を詰める蝉原。
そんな蝉原に、センは、とんでもない反応速度で対応。
綺麗なカウンターで蝉原の腹部を砕こうとする。
センの拳は、完璧に蝉原の急所をついたのだが、蝉原の生命力がエグすぎて、大したダメージになっていない。
「硬ぇなぁ」
そんなセンの文句に、蝉原は気をよくして、
「くくく。セン君。君の拳は重たいねぇ。俺以外の誰かがくらったら、たとえそれが誰であろうと、確実にワンパンで消滅する以外の運命はあり得ない」
「テメェもきっちり消滅させてやるよ。今のテメェの生命力はエグすぎるから、一発じゃ無理かもしれねぇが、必ず、跡形もなくバラバラの木っ端微塵にしてやる。あの地球人のように!!!」
軽くテンプレをブチ込みつつも、本気で殺意を宣言して、センは加速する。
センは、それまでに磨いてきた武をぶつける。
蝉原はそれについていけていない。
蝉原の生命力が本当にエグいぐらい膨大なので、どんだけセンがクリティカっても、なっかなか蝉原のHPは削れていないが、もし、これがボクシングなら、『10』‐『0』で蝉原の判定負けである。
「殺神――」
と、蝉原がグリムアーツを使おうとしたタイミングで、
毎回、センの、
「神速閃拳」
爆速ジャブが、蝉原の顔面をつく。
蝉原は、『技を出すこと』さえ容易には許されない。
2人の間には、それだけ極端な戦闘力の差がある。
あえて2人の実力差を例えると、
『世界大会優勝のプロゲーマー』VS『普通にゲームが下手なお母さん』
この差以上の、明確かつ、あまりにも遠い距離。
ただ、それだけの差があっても、
数値の差がイカツいため、
センが蝉原を削り切ることはできなかった。
蝉原の攻撃は一切センに届いていないが、
センの攻撃も、また、蝉原には届かない。
「……ふふ……流石に、ここまで、お互いの『数値』と『戦闘力』に差があると、見てられないクソ泥仕合になってしまうね」
数値では蝉原が圧勝。
戦闘力ではセンが圧勝。
その圧勝具合が、あまりにも、いい具合に五分五分すぎて、拮抗しまくっている、という、だいぶ厄介な状況。
このままだと、決着がつくまでに、とんでもない時間がかかってしまうことが予想された。
と、そこで、蝉原が、フラットな表情で、ボソっと、
「……俺の戦闘力が、もう少し、目に余るゴミだったら、まだ、君が俺を削り切る可能性もあったけれど、俺も、一応は本物の3兆年を積んでいるから、君の攻撃を最低限処理することがギリギリできなくない。こうなってくると、君の攻撃力じゃあ、永遠をかけても俺を殺せない。まあ、ソレはこっちも同じなんだけどね。俺ごときじゃ、君を削りきれない」




