93話 目覚めろ、ディアブロコミュニティ。
93話 目覚めろ、ディアブロコミュニティ。
「は、はは……真醒の8を使ったセクスタプルですら……相手にならないか」
「相手にならないわけじゃないが……だいぶぬるいのは事実だから、もうちょい『深みのある極悪さ』を、かましてほしいってのが本音かな」
「ふ、ふふ……ははは……」
自嘲が止まらない蝉原。
しばらく笑ってから、
グっと奥歯をかみしめて、
「ソル……まだだ……これじゃあ、ダメだ……もっとよこせ……」
自分の奥にいるソルに命じる。
もっと、もっと、と、強欲に、出力を欲張る蝉原。
自分自身との対話にトリップしている蝉原は、
「ああ……問題ない……許諾する。俺を……食い殺せ……」
自分自身の『奥』に、そう命令をくだした。
その結果、
「う……うぐ……ぐぐぐ……ぐががががあがががががががががああああああががががっ!!」
ブルブルと、爆発寸前みたいに痙攣する蝉原。
はためにも、出力が上がっているのが分かる。
ただ、どこからどう見ても危うい、極限状態。
蝉原は、自分自身に食い破られそうになっているが、
どうにか、なんとか、ギリギリのところで耐えながら、
「ぐぎぎぎ……こ、この状態は……ネクロガル・サイコジョーカー……強大な負荷と……引き換えに……出力の……げ、げ、限界を! 超えるぅう!!」
「そんな無理して暴露を積まんでも……」
と、心配の声をかけるセンに、
蝉原は、
「ま、まだ……まだ、いける……俺は……センエースの敵だ……センエースの敵なんだぁあああああ! だったら、もっといけるはずだろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! もっと、よこせよぉおおおおおおおおおおお!!」
血走ったバキバキの白目をむいて、
世界に対し、ガンを飛ばしていく。
見境のない全方位への悪意が蔓延。
全てはセンエースの敵になるため。
蝉原の全部が沸騰していく。
積んできた下地と、叫んだ覚悟が呼応していく。
本物の質量が、研ぎ澄まされていく。
「あああああああああああああああああ!!」
自分の中にあるものを引きずり出していく。
イメージ的には、腹をかっさばいて、腸を引きずり出している感じ。
恥も外聞もなく、後先も考えず、
無鉄砲に、無茶に、無調法に、
蝉原は、
夢を追い求める。
「プラチナァ! スペシャルゥウウウウウウウウウウウウウ!!」
そうやって、目覚めたのは、
蝉原が誇るプラチナスペシャル『ディアブロコミュニティ』の裏スペシャル。
――『デビルマンズ・メイ・クライ』
その効果は極めて破格。
悪神の中の悪神だけに許された特権。
――今後、蝉原勇吾は、絶対的な、『悪の信仰対象』となる。
どんな悪も、蝉原勇吾の前ではひれ伏し、
その悪意の深さに感涙する。
「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」
蝉尾は、何度も深呼吸をする。
深呼吸の回数に比例して、
どんどん、精神と肉体が落ち着いてきているようにうかがえた。
「はぁ……」
そして、ついには、サイコジョーカーを背負っているとは思えないほど、
静かな精神状態に落ち着いた。
その様子を見たセンが、首をかしげて、
「あれ? サイコジョーカー、解除した?」
そう尋ねると、
蝉原は、スっと目を開けて、センを見つめながら、
「いや……最大出力で稼働中だよ。おかげで、ほら……なかなかの大きさだろう? 数値だけで言えば、俺は君を大幅に超えている。3倍ぐらいはあるんじゃないかな」
蝉原がついに目覚めてしまった……
もうダメだ……
おしまいだ……




