91話 命の答え。
91話 命の答え。
「蝉原。世界を守るという観点で言えば、成長する前の、今のうちに、お前を消してしまう方が正しいだろう。しかし、それは、さすがに、つまんねぇよ。今の俺にとっては、今のお前ごときを潰すのは、蟻を踏みつぶすのと大差ねぇ。せっかく200兆年も積んだんだ! この力を思う存分、ふるわせてくれよ!」
「ああ、まかせてくれ、セン君! 必ず、君を輝かせてみせる!」
叫びながら、
互いに、ボコボコと殴り合う。
もっと開け。
もっと輝け。
そう願いながら、ささやきながら、
お互いの武を、まるで、火打石のようにぶつけあう。
そうやって生まれた火種を、どうにか育てて、大きな炎にしようと必死。
「殺神覇龍拳!!」
磨き上げたアッパーカットを、
センは、ザクっと受け流し、
「そんな拳じゃ、初心者しか狩れねぇえええ!」
重たい拳を、蝉原の顔面に叩き込んでいく。
砕けた頬骨が眼球に突き刺さる。
溢れた血で呼吸ができなくなる。
腫れた肉が灼熱の炎症を起こす。
そんな、重たい激痛の中で、蝉原は、自分が積み重ねてきた3兆年の走馬灯を見ていた。
本当に苦しかった時間の牢獄。
苦しくて、苦しくて、
けれど、だからこそ、
乗り越えた時、心の底から誇らしかった。
灰化無効の状態だから、誰でも時間さえ経てばクリアできる地獄――そんなことは理解している。
だが、そういう無粋な前提などどうでもいいと思えるぐらい辛かったし、3兆年の中で積み重ねた努力量が半端ないことも事実。
だから、
「俺は……蝉原勇吾……この世で、たった一人……センエースの前に……立てる修羅……」
愛の奇跡でも、友情パワーでも、絆のあれこれや、仲間の結束がどうたらでもなく、もちろん、運命でも、宿命でも、ましてや天命でもなく、裏技でもハメ技でもバグ技でもチートでも改造でもコピーでもない。
ただただ、あほうのように、キ◯ガイのように、純粋に、磨き続けてきた全部が、ようやく、やっと、開花する……それだけの話。
今までずっと、本当に、マジで、嘘偽りなく、ガチンコで、バカみたいに積み上げてきたんだ。
だから、届いた。
それだけ!
「真醒・究極超神化8ぉおおお!!」
天才が積んだ3兆年の土台の上に、
ソルと一つになることで得た爆発的な数値を重ねて、
『クレイジーサイコボッチと殺し合う』というきっかけを注いだ。
その結果届いた、最果ての神化。
光が厚くなる。
すべてが白になる。
「はぁ……はぁ……」
一度、軽く、呼吸を整えてから、
蝉原は、天を仰いで、
「これが……命の答え……幻想を超えた栄華。無限の彗星……インフィニット・セクスタプル神化」
「随分と、ボリューミーだな。美味しいもの全部詰め込んだ、わがままパックってか? すげぇ、すげぇ。おっきいよ、蝉原。今のお前は、ガチンコで膨大だ。たった3兆年で、俺が200兆かけても届かなかった世界にたどり着いた。瞠目するぜ、心底から」
センは、フラットな表情の中に、
隠し味程度の嫉妬を込めて、
「いやぁ、ほんと、しんどいぜ。3兆年程度で真醒8になりやがって」
そう文句を口にしてから、
武を構えて、
「ほんと、大きくなったなぁ。蝉原さんよぉ。……そこまで膨らんでくれたのなら、流石に俺も全力を出さざるを得ないな」




