84話 どうしても滑稽。
今日は遅くなる可能性があるので、
朝に2話投稿します。
本日の1話目です。
84話 どうしても滑稽。
「準備運動は、もう十分だよね」
そう言ってから、グンっと、自分の奥にある熱を爆発させていく。『蝉原が膨れ上がった』とセンが認知できたと同時、蝉原は、センの背後を奪い取っていた。蝉原は、ギラギラした目で、腰の回転に心を込めて、センの首裏に、延髄蹴りをぶちこんでいく。
対応が明確に遅れたセンは、蝉原の一撃をもろにくらう。
激しい衝撃で脳がグラングラン。
コンマ数秒、ガチで気絶したセンに、
蝉原は、容赦ない追撃を入れていく。
両手をセンの頭にあてて、
「亜異次元砲」
ゼロ距離から、クリティカルな異次元砲を叩き込む。
これ以上ない『完全なる殺意』に包まれるセン。
ギリギリのところで気絶から回復したセンは、
「っ……うりりりぃいいいいっ!!」
と、奥歯をかみしめながら、体をズラして、致命傷を避けると、
全力で、自分の体を回復させながら、
「神速閃拳!」
『暴れのジャブ』で、『安定感のある距離』を確保しようとする。
一発で止まることなく、そのまま、続けて、
「百華・神速閃拳!!」
豪快かつ豪速の連打。
スコールのように降り注ぐ拳の弾幕を前に、
蝉原は、
「万牙・殺神蛇拳」
丁寧に、フリッカージャブの連打を合わせていく。
センの神速閃拳の方が『遥かに練度が高い』ので、完全に相殺することはできなかったが、しかし、大半を打ち消すことに成功した。
ダメージはそこそこに受けたが、
しかし、この程度なら、秒で回復していく。
蝉原は、まだまだ、目をギラギラさせて、
センエースを削るための最善手を打ち続ける。
迷いのない猛攻は、
死ぬほど積んできたイメージトレーニングと、
弟子たちや破壊衝動ソルを相手に積み重ねてきた反復練習の賜物。
本物の質量を有する蝉原の拳を前に、
センは、
(蝉原……すごいな、お前。まだ完全にあったまっていないのに、ここまでの重さを魅せてくるか。『本当の底』では、いったい、どんだけの輝きを放つのか……)
あえて言おう。
蝉原は、すでに、あったまっている。
準備運動を終えて、ギアをフルスロットルにまで持っていっている。
つまりは、今の段階で、きっちりと『底』を見せている。
だが、センエースはソレに気付けない。
なぜなら、センは、『蝉原勇吾は100兆を積んでいる』と思い込んでいるから。
『蝉原ほどの天才が、100兆年を積んでいながら、この程度のわけがない』という強い信頼。
その推測自体は間違っていない。
事実、もし、蝉原が100兆を積んでいたとしたら、この程度が底になるはずがない。
もっと、もっと、とてつもなく大きな武を見せていただろう。
――だから、センは、蝉原が、自分と同じように、『超々長期戦を見据えた、フルマラソンテンポのギアの上げ方をしている』と認識し、その上で、『最初の1速の段階で、随分と馬力とキレがあるじゃねぇか、やるねぇ。やはり天才か』と、普通に感心している。
「蝉原! すごいな! 今のお前は、確実に今の俺を超えているよ! 俺の半分の期間で俺をガッツリ超えていくとは、なんてウザい野郎なんだ、このやろう!」
「最大級の褒め言葉、謹んで頂戴させてもらう。誇らしいよ。他の何よりも」




