75話 ガチで100兆年を積んだのか……すげぇじゃねぇか、蝉原。
75話 ガチで100兆年を積んだのか……すげぇじゃねぇか、蝉原。
「セン君。どうやら、かなり疲れているみたいだね。俺はヌルとは違うから、満身創痍の君を襲ったりしないよ。そんな半端な勝利は求めない。完全に勝つ。ソレが俺の目標だ」
そう言いながら、蝉原は、また指をパチンと鳴らした。
すると、センの肉体がスゥッと軽くなる。
「おっと……や、やるじゃねぇか、蝉原。トウシですら、『秒での完全回復』はできなかったってのに、無詠唱かつ秒で俺を全快させるとは……惚れ惚れするぜ」
「あんな三下と俺を比べないでくれよ、セン君。俺は、この世で、唯一、君を殺せる化け物だよ。存在の次元が違うんだ」
「限界まで自惚れてるねぇ。いや、いいよ、いいよ。トウシ相手にソレが言えるってのは大したもんだ。あのトウシさんを三下扱いできるのは、世界広しと言えども、お前ぐらいだろう。ハッタリか本気か知らんが、どっちにせよ、『胆力の深みが終わっている』って事実に変わりはねぇ」
「……セン君、今から君は死ぬ。俺に食われて死ぬ。そして、俺は、完全なる蝉原センエースになるんだ。どうだい? 素敵だと思わないかい?」
「……そのゲロ質問に、俺が『思う』って答えたら、さすがに、キモ過ぎない? ヤバすぎない?」
そんなセンエースの言葉を、さらりと受け流してから、
蝉原は、恍惚の表情で、
「――『深い永き』を積む中で、俺は、多くの夢を見た。君という『命の希望』を刈り取る夢。ただ殺すだけでは、君に対する『この想い』を満たすことは出来ない。君に焦がれた俺の『全て』を昇華させるためには、君と混ざり合うしかない。どうか、全力で、受け止めてくれ、セン君。俺の全部を、その魂魄すべてで」
(こんだけ、自信満々ってことは……どうやら、ガチで100兆を積んだくさいな……ただのフェイクや、ぬるい演技で、ここまでの、『ドヤ感』は出せねぇ……こいつの『フルアーマー・ドヤ顔』には、ガチンコの質量を感じる……こいつ……マジで積んだのか……俺の半分……100兆年を……うーむ……やるじゃねぇか)
と、センが『蝉原の器』を誤解している間に、
蝉原は、固有世界を展開していく。
空間ではなく世界。
とてつもなく広い、なのに、蝉原と閃の二人以外、何もない領域。
他の誰も邪魔できない、二人だけの世界で、
蝉原は、センの目を見つめながら、
「……さあ、やろう。セン君。ここなら、ザコどもの邪魔は入らない」
「永き時間をかけて、極限まで強化してきた俺の『自慢の配下』を『ザコ呼ばわり』とは、いい具合に『かましてくれる』じゃねぇか、蝉原さんよぉ」
「……トウシたちも、だいぶ強くなってはいたようだけれど、言うまでもなく、俺と君の領域にはついてこられない。チョロチョロされても邪魔なだけだ。俺と君のダンスに、不純物はいらない」
「……だから、MPとか、ドラゲナイとかをつかって、梅雨払いをした、と?」
「そうだよ。君と戦うにあたって、色々と考えたんだ。『小技を使って、君を削る作戦』とかも色々と考えた。召喚獣も、他に、もっとたくさん、ヤバいのを創造してきた。……けど、『かったるい搦め手』は、全部、やめたよ。俺が最終的にとった案は『邪魔な雑音を全部排除』して、静かに、豊かに、自由に、二人きりで、真剣に、全力で、語りあうこと」
「……蝉原。やる前に、一つだけ聞かせてくれ。お前、マジで、俺の半分……つまりは、『兆』の単位がつく時間を積んだのか?」




