54話 200ってなんかキリが悪いし、170で終わっておこう。うん、そうしよう。
今日は遅くなる可能性があるので、
朝に2話投稿します。
本日の1話目です。
54話 200ってなんかキリが悪いし、170で終わっておこう。うん、そうしよう。
「HR仕切り、集合時点呼、授業前後号令、各種行事における会議への参加、企画・進行、教師のパシリ、クラスメイトの嫌われ役、諸々、全部任せた」
「改めて考えると、ガチで、絶対になりたくないな、学級委員長。あれは、もう、学校公認の公式なイジメだろ」
★
170兆年が経過した。
頻繁にヘラったり、ピーピー泣いたり、田中にウザ絡みしたり、ストレスで全身が痙攣したり、爆発級の頭痛に見舞われたり、たまに目が見えなくなったり、まれに耳が聞こえなくなったり、喉がつまって呼吸ができなくなったり、暴力的な倦怠感で指一本動かせなくなったり、諸々、なんだかんだ、すったもんだありながらも、どうにかこうにか、170兆年、頑張り続けてきた。
――『残り30兆年』という、『実質永遠』を前に、
命の王センエースは、
「もういいんじゃないかな」
と、素直な想いを口にした。
「170って、ほら、キリがいいじゃん? なんだか、高貴なエンジェルナンバーって感じがして、縁起もいいし。うん、そうだよ、200ってなんかキリが悪いし、170で終わっておこう。うん、そうしよう」
と、『頑張らなくていい理由』を捏造して並べ立てるセンエース。
全力で、目の前の苦しいことから逃げようとするセンに、
田中は、
「ええで」
サラっと、そう言った。
田中の言葉に、センは目を丸くして、
「へ?」
「だから、ええって。好きにせぇよ。お前は十分すぎるぐらい頑張った。ここで辞めても、誰も文句言わん。というか、誰も文句言えん。お前は、そのぐらい頑張った。だから、もうええ。降りたいんやったら降りろ。嫌味や煽りで言うてんのとちゃう。お前は頑張りすぎた。だから、正式に、『もう頑張らんでええ』っていう許可をワシがお前にくれてやる。よく頑張った。お前は、ほんまに、よぉ頑張った。お前はすごい」
そう、言ってきた田中の目には、
確かに煽りの色はなかった。
純粋で無垢で真っ直ぐで、
――だからこそセンは、
グイっと、とことん力強く、田中の胸ぐらを掴み上げて、
血走った目で、田中の目を睨み、
「おいごら、天才。……その出来のいい頭で、死ぬほど考えてから、俺の質問に答えろ」
「質問? どんな?」
「俺はまだ強くなれるか?」
「……」
「超天才のお前にとっては簡単な質問だろう。答えろよ。タナカ・イス・トウシ。俺はまだ強くなれるか?」
賢い田中は、センの『その問い』に込められている言葉の意味を秒で理解した。
深く考えるまでもなく、すぐさま理解できてしまった。
センエースの想い、覚悟、意地、献身。
全部……全部……
――だから、田中は、泣きそうになった。
少しでも気を抜けばワンワン泣いてしまいそうで、けれど、それは絶対にイヤだから必死に耐えた。
表情は決して変えず、まっすぐに、センの目を睨み返したまま、ただただ、押し寄せてくる感情に耐えつつ、田中は、無数の返事を考えて、添削して、『これではダメだ』・『もっと届く言葉はどれだ?』という、『こだわりの熟考』を経てから、
「余裕で全然、まだまだ強くなれる。『どのぐらい強くなれるか』の具体的な詳細は、一ミリも分からへんけどな。……お前の『底』は、ワシごときに測れるものではないから」




