33話 おめでとう。
5年連続毎日2話投稿前夜祭記念、
コミカライズ版センエース、
「まんが王国」「コミックシーモア」「eBook japan」で配信されている記念、
1日10話投稿!
6話目!
33話 おめでとう。
これまでの人生の中で、『停滞していた時期』というのも、山ほど経験してきたが、しかし、『ここまで重たい停滞』は初めてだったので、流石のセンエースさんもメンタルにきている模様。センは、ただのやかましい『だだっこ』のように、
「もう、いやだい、いやだい、いやだい、いやだい! やりたくなぁあああい! もういやぁあああああ!」
限界がきて喚き散らかす。
とても、『20兆年以上生きている命の王』とは思えない情けなさ。
しかし、それも仕方がない話。
人は、どれだけ年を取ろうと、結局のところの本質に変化は生じないものだから。
高齢者になれば丸くなる――という幻想は捨てた方がいい。
『外面だけは、ガキの頃より、ちょっとだけマシになる』というだけで、本質の方に大きな変化など起きない。
所詮は、脆弱な生き物。
それが人間。
「もうダメだぁあああ! おしまいだぁああ! ここから、俺は永遠に、この壁の前でウロチョロすることしか出来ないんだぁああああ! そんなのいやだぁあああああ!」
わめいて、叫んで、
「もう許して! もうしんどい! 誰か、助けて! ヒーロー、見参して!!」
救いを求めていくスタイル。
もちろん、誰も助けてくれやしない。
なぜなら、ヒーローは彼だから。
彼以外に、その仕事を勤め上げることが出来る者は存在しないから。
「ひっぐ……ひっぐ……」
あまりのしんどさに、心が砕けそうになり、
普通に、ボロボロと泣いてしまうセン。
ずっと、痛々しく泣きながら闘っているセンを見て、
配下の面々は、うろたえているが、
そんなものを気にしている余裕はなかった。
苦しくて、辛くて、
どうしようもない。
そんな気持ちをずっと抱えて、
センは、まだまだ、時間の牢獄と向き合い続ける。
口ではどれだけ弱音を叫ぼうと、
しかし、体は、ずっと、闘い続けている。
――そうやって、センエースは、前に進む。
★
さらに追加で10兆年の月日が流れ、
合計30兆年という『永き』を積んできたセンエース。
これだけの爆裂な時間が経過していながら、
しかし、センは、
「……まるで成長していない……」
まだ、壁の前でウロウロしていた。
自分自身をテンプレで嘲笑することしか出来なくなっていた。
「もう終わったな、俺……どうやら、俺の旅はここまでらしい。どれだけ時間をかけようと、才能がなければ超えられない壁がある。よくわかったよ。この世界は残酷だ。そして、とても美しい」
トリプルの壁が、とにかく厚すぎた。
尋常ではなかった。
「おそらく、200兆年目の段階でも、俺は、壁の前にいるんだろう。もう、俺は、一生、ここにいるんだろうと思う。1000兆年つかおうと、1京年かかろうと、関係ない。もう俺は、ずっと、この壁の前で生きていくんだ。そう。俺はこの壁に守られて生きていくんだよ。そう考えれば、この『壁の前』こそが『安息の地』じゃないか。そうか、ここが約束の地。ついに、俺は『最後の証明』に至ったんだ。これが、本当の自由。そう。俺はたどり着いたんだ。これが、命の答え。ああ、なるほど。そうか……最初から、俺の命は完成していたんだね。気づいていなかっただけなんだ。すべての命が天と地の間で一つになって、調和して……ああ、そうか……そうだったんだ。……そこにいたんだね……おめでとう……おめでとう……おめでとさん……めでたいなぁ」




