27話 すべてを支配されても、誇りだけは思い通りにならんぞ。
27話 すべてを支配されても、誇りだけは思い通りにならんぞ。
――振り出しに戻ったセンは、
必死に、バカみたいに、
全力で、自分の運命と向き合い、
どうにか、こうにか、
前回の終着点である『5兆6000億年目』まで舞い戻ってきた。
今回の場合、最初からフルスロットルで、
それがゆえに、あまりにも代わり映えがしないので、
さすがに、ほぼほぼカットという結果になったが、
『代わり映えのしない地味な作業の連続』が、
『いかに辛いか』に関しては、説明するまでもないだろう。
無数のアトラクション目白押しの遊園地で遊んでいる光景と、
ひたすら地味な基礎トレをしている光景。
――『動画的な見栄え』で言えば、
もちろん前者の方が、取れ高満載で有能。
対して、後者はボツ確定のクソ映像。
しかし、『地獄度』で言えば、後者の方が幾億倍。
ひたすらに、延々に、
『次のステージ』を求めて、
地味に、地道に、質素に、素朴に、殺風景に、陰気くさく、
ただ、ただ、反復練習を積み重ねるだけの時間。
そんな『派手さにかける、じっとりと重たい、濃密な時間』を積み重ねた結果が今。
「ほら、言ったとおりだろ。たとえ数字をなくしても、器は無くならない。前に5兆年を積んだ時よりも、今の俺は、はるかに強くなっている」
センが言った通り、
現時点のセンエースは、
前回のセンエースを大幅に超えていた。
前回を踏まえた上での『実質的経験値』をもとに、
『クソ地味すぎる無限地獄の反復練習』を経て、
さらに、一回り大きくなることに成功した。
『武の極み』に対する理解度のアップデートが、
この5兆6000億年の間で、何度も行われた。
何度も、何度も、何度も、
暗闇の中の手探りを超えて、
『あ、これ、真理じゃね?』
『あ、これが神髄ってやつか』
と、『気付き』を経てきたが、
しかし、そのたびに、
『あ、でも、まだ、もっと奥に何かがあるな』という、
『それまでは見えていなかった広がり』を発見して、
また、暗闇の中での手探りを再開する。
そんなことを、ひたすらに、延々に繰り返して、
センエースは、今日に辿り着いた。
「今回はボーナスアンロック制ではなく、最初から、絶望がしっかり積まれた状態でスタートしたから、前回より強くなるのは当然」
などと、ヨグが、知ったような口をききやがったので、
センは、軽くムっとして、
「注目すべき点は、最初から絶望マックス状態でも、俺が壊れなかったという点だ。前の時の俺なら、最初からこの絶望と向き合うことはできなかった。前の5兆年があったから、今回の5兆年では、最初からフルマックスを貫くことができた。これは証明。俺から『一番大事なもの』は絶対に奪えないってこと。記憶とレベルと戦闘力と存在値は支配されても、誇りだけは思い通りにならんぞ。奪われようと、失おうと、どうなろうと、俺は必ず立ち上がって、クソッタレな運命にビシっとジャーマンを決め込んでやる」
「イラっとした時、早口でまくしたてるところが、歴戦の陰キャオタっぽいですね、センエースさん」
「やれやれ。まさか、その程度のヌルい挑発で俺が怒るとでも? 青いな。合計で10兆年以上もの時間を生きてきた『このセンエースさん』に、そんな、安い挑発が届くわけがなかろうもん」
「さすがっすね、10兆童貞さん」
「おもて出て、かかってこぉおおおおい!!」




