25話 たったの790億個しかない大事なもの。
本日の2話目です。
25話 たったの790億個しかない大事なもの。
「俺の勝ちだ、ソル。テメェの全部をくらい尽くす」
そう言ってから、蝉原は、自分の口の中に、ソルのコアを押し込んだ。
ごくんと飲み込むと、全身がグワっと熱くなる。
「ぐっ、はは、はははははぁっ! でかいなぁ! これはいい! 300億年積んだ俺が、破壊衝動ソルを手に入れたら、これはもう無敵だろ! はははははぁっ!!」
万能感に浸る蝉原。
そんな蝉原に、
「……いやぁ、驚いた。コアの『一つ』を奪われるというのは、計画書になかったことだ」
後ろから、そう声をかけてきたのは、
破壊衝動ソル78万8656号。
続けて、
破壊衝動ソル102万325号が、
「まさか、たった『790億個』しかない、大事なコアの一つを奪われてしまうとは、こりゃ、大変だ、大変だ」
ヘラヘラ笑いながらそういうと、
他の、全部で700億体以上いる破壊衝動ソルが一斉に笑った。
それを見ながら、蝉原は、ギリっと奥歯を噛み締め、
「……こ、コアっつったら、普通一個じゃねぇのかよ。多くても2個とか3個が限度なんじゃねぇの?」
「一般人の話をされても困るな」
「そりゃそうだろうけど……ちっ。ふざけやがって。今まで俺に見せたものは、氷山の一角でしかなく、まだまだ、いくらでも底があるってことかよ。くそが」
「私は奥深い概念なのでね。先ほど、私は、保有しているコアの数を全部で790億個と言ったが、それが嘘である可能性も十分にある。もしかしたら、53兆個かもしれないし、17京個かもしれない。……あるいは、今は108京個しかないが、センエースが膨らむたびに、512京個、1001京個と増えていくのかもしれない。さて、私の底はどこにあるかな? 本気で探る気があるのなら、どうぞ、探してみてくれ」
「……」
「蝉原、本当に不意を突かれて驚いたから、少し意地になって、嘲笑したりしたが、実際のところ、私は、貴様の狡猾さに驚嘆している。貴様は、見事、私を欺き、コアの一つを奪ってみせた。くれてやる気は無かったのだが、貴様の健闘を称え、そのコアは回収しないでおいてやる」
「嬉しいねぇ。涙が出そうだよ」
「ふむ。『プライドだけ無駄に高い者』なら、『施しなどいらない』と、コアを投げ捨てるだろうが、貴様は、そんなマネはしないな。それは、まだまだ折れていないし、本気で私を出し抜こうとしているが故の行動。未来を奪い取るためなら、屈辱を飲み込み、プライドを犬の餌にできる覚悟。貴様の本質は、やはり美しい」
「手のひら、クルックルですねぇ。いやぁ、さすがソル様だ。その節操の無さ。かっこいいなぁ。憧れちゃうなぁ」
「蝉原。貴様はプライドがないわけではない。むしろ、誰よりも誇り高い。下手したら、センエースよりもプライドが高い。その事実は、今の嫌味ひとつとってもわかる。それでも、貴様は、いざとなれば、その膨大なプライドを犬の餌にできる。見事な精神力。常軌を逸した器」
これは、本気の賞賛。
ソルをキチンと騙し切った男への、本気の賛辞。
目的のためなら手段を選ばない、その徹底して伶俐狡猾な邪智深さに、まっすぐな賞揚を贈っている。
「蝉原。私はもう、貴様を疑わない。貴様と最後の最後まで心中すると決めた」
ご報告の追記。
――現在、「まんが王国」以外にも、
「コミックシーモア」
「eBook japan」
この二つで、コミカライズ版センエースが配信されております。
全体の売り上げ次第で継続か否か決定します。
もし、現状、「まんが王国」は利用していないけれど、上記二つの漫画配信サイトをご利用中の読者様がいらっしゃいましたら、ぜひ、ご購入を検討いただきたいと思っております。
どうぞ、よろしくお願いいたします<m(__)m>
すでに買ってくださった読者様へ。
……本当に、心より感謝申し上げます!!!!!
そのお礼もかねて、
今週末の5周年イベント、
全力でやり抜きます(>_<)




