15話 200兆年を要求していく、狂気のカツアゲ。
15話 200兆年を要求していく、狂気のカツアゲ。
「俺が5兆年以上かけて積み上げてきた『数値』を全部くれてやるから、丸ごと、『繰り返すためのエネルギー源』にして、もう一度、俺に試練を与えろ。俺の1000億年を使って、お前は5兆年の修行時間を捻出した。その技能を、今度は、5兆年分で実行するんだ。単純計算で200兆年ぐらい修行できるはずだが、どうだ?」
「お前、頭おかしいんじゃないか?」
「まれによく言われる」
「ちょ、ちょっと待てよ、セン。マジで、ちょっと待っててくれ」
と、センに、いったん、ストップをかけてから、
「――ちょっ、トウシ、ザンク、ソル、集合!」
そこで、ヌルは、先ほど吐き出した田中たちに集合をかけて、
「ヤベェぞ、あいつ、なんか、頭おかしいこと言ってる」
「ワシもびっくりしたわ。あいつ、イカれとんな」
「流石のザンクさんも引いとる。あいつ、キショすぎるやろ」
井戸端会議が止まらない。
ソル以外の全員、センエースの異常性に震えている。
ヌルと田中家の面々が、
口々に、センを誹る中、
ソルだけは、黙ってセンを見つめていた。
ソルの視界の端で、
ヌルが、
「コレは、どうするべきだ? マジでやらせるのか? 一応、今のセンが保有している『莫大な経験値』を使えば、200兆年を捻出することは、どうにか、できなくもないが、でも――」
「いや、流石に無理ちゃう? せっかく、ここまで育ってくれたヒーローを、無意味にぶっ壊してしまうだけの気がすんねんけど。200兆は、流石にエグいて。ワシやったら、確定で灰になる。謙遜とかやなく、ゴリゴリのマジで」
「ザンクさんも、さすがに、それはありえんと思うで。数字が乱舞しすぎて感覚マヒっとるから、ここらでいったん冷静になるべきやろ。200兆年は、無理やて。普通に」
ここにいる者たちは、みな、『センエースが努力できる時間』は多く見積もっても『2~3兆年ぐらいが限界だろう』と思っていた。
普通に考えて、2~3兆など『不可能の領域』だが、『センならいけるかも』と夢みがちな理想をベースにした皮算用を弾き出した。
2兆や3兆ですら、だいぶ妄想豊かな皮算用だというのに、
しかし、実際のところ、
センエースは、
3兆どころか、
余裕で5兆年をクリアしてみせたあげく、
その上で、
それを全部捨てて、
さらに数十倍頑張る、
などと供述していやがる。
もう気色悪すぎる。
オタオタ、オロオロ、ごちゃごちゃと、
無意味な井戸端会議にご執心の面々に、
――センは、
「なんか勘違いしているようだから、ここではっきり言っておくが、俺は『お願い』をしてんじゃねぇ。命令してんだ。200兆年捻出できるんなら、やれ。俺の経験値を奪い取れ。そして、舞台が整った後は、黙って見てろ。そうすれば俺が、輝く明日をくれてやる」
そこで、センは、一瞬だけ間を溜めてから、
覚悟の色が暴走している顔で、
「俺が壊れるかも、とか、ナメたことぬかしてんじゃねぇ。どんな時でも、バカみたいに、前だけ向いてろ。そこには必ず俺がいる。俺は届く。俺ならたどり着く。俺をどなたと心得る。命の王にして、全ての運命を殺す狂気のヒーロー、舞い散る閃光センエースさんだぞ」
そこで、センは、
あえて、滑稽に、
全力で、かっこいいポーズをとって、
「ヒーロー見参」
『引き返せない誓い』を立てる。
『最後の最後まで抗い続ける』という、運命に対する宣戦布告。
『これ』を叫ばれてしまうと、もはや、周囲のモブどもに、ごちゃごちゃ言える権利はなくなる。




