91話 殻がかたすぎる。
本日の2話目です。
91話 殻がかたすぎる。
(ヤベェな めちゃくちゃ頑張ってんのに、全然伸びねぇ)
イメージ的には、減量末期のボクサー。
極限まで体重を落としてしまったせいで、1グラム落とすだけでも狂気を必要とする。
脳がちぎれるほど水を我慢して、一日中、運動しまくっても、10グラムも落ちない。
センの心境的には、ソレの数兆倍のしんどさ。
とにかく苦しい。
ずっと死にそう。
――それでもセンは前を向く。
『確かな今日』を積み重ねていく。
何度も壊れながら、しかし、自力単騎の孤軍奮闘で『テメェの心』をどうにかこうにか支えこんで、
へし折れるほどに歯を食いしばって、
狂気の『一日一日』を積んでいく。
血と肉が渇いて、
眼球が干からびそう。
五感の全部が痛みを伴うほど研ぎ澄まされていく。
逆にすべての感覚がモノクロになる瞬間もあった。
じくじくと、魂のどこかが腐っていくのを感じる。
ばきばきと、自分の刀心が壊れていくのを感じる。
ぐにぐにと、根幹の背骨が歪んでいくのを感じる。
そうやって、地獄に耐え忍びながら、
当たり前のように4周目に挑戦。
もう意味がわからない。
ただただ頭おかしい。
★
……4周目も成果はショボかった。
もちろん強くはなれたが、微々たるもの。
ちなみに、現在のゼノリカの存在値は以下の通り。
存在値
センエース 9750兆
田中 9999兆
シューリ 2900兆
アダム 2100兆
ミシャ 2000兆
平熱マン 1020兆
ゾメガ 1000兆
三姉妹 平均750兆
九華 平均700兆
十席 平均520兆
楽連 1兆~8兆
百済 2兆~9兆
沙良想衆 1兆~5兆
★
――『5周目』に突入して以降も、停滞期が続いていた。
なかなか殻を破れない日々が続く。
苦しい、苦しい、と毎秒叫びながら、
しかし、センは折れずに、毎日を積み続けた。
ここまできてしまうと、もはや、この旅路を、狂気という言葉でくくることすら侮辱に思う。
そんな安い次元ではない。
そういう薄っぺらい領域ではないのだ。
センエースの地獄は終わらない。
『明けない夜はない』という戯言にすら怒りを覚える。
やまない雨はないとかじゃなく、今、ふっているこの雨が耐えられない。
――そう叫びたい悲痛の本音を必死に飲み込んで、
センエースは、ヒーローの仮面をかぶり続ける。
『縁日で買ったクレ〇ンしんちゃんのお面』よりもはるかに脆いその仮面を、
センエースは、絶対に手放さない。
★
――最後の『6周目』に突入してからも、
しばらくは、停滞期が続いていた。
6周目突入時点での存在値はこちら。
存在値
センエース 9999兆
田中 9999兆
シューリ 3200兆
アダム 2500兆
ミシャ 2300兆
平熱マン 1230兆
ゾメガ 1190兆
三姉妹 平均880兆
九華 平均820兆
十席 平均750兆
楽連 2兆~11兆
百済 3兆~15兆
沙羅想集 1兆~8兆
田中もセンも、『9999兆』の壁を超えることが出来ずにいる。
なっかなか、殻を破れない日々が延々と続く。
命の壁が立ちふさがる。
配下も己も、ずっと、同じ場所で足踏みをしている。
かけた時間の割には強くなれない。
沙良想衆のライラとかにいたっては、1兆年も鍛錬を積んでいながら、存在値が3000億ぐらいしか上がっていない。
いや、まあ、『3000億も上がった』という見方も出来なくはないのだが、
しかし、ゼノリカ全体を俯瞰すると、あまりにひどい。
背負いまくった地獄に加え、
『伸び悩み』という重たいしんどさまで抱え、
もう、本当に、『いっそ死ねたらどんなに楽だろう』と、
そんなことばかりを考えながらも、
しかし、最後の最後では、どうしても踏ん張って耐えてしまう、
そんな自分の厄介すぎる根性に辟易しつつも、
必死に、『それでも』と叫び続け、
折れずに戦い続けていたある日、
センは、
「……ん ああ、そうか」
何かに気づいた。




