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37話 たとえばの話だ。あくまでも。

 37話 






 ――別に、だからなんだって話だろ?




 まさか、だからって、俺を善人扱いするわけじゃねぇよな?



 ありえねぇよな?






 ムカつくやつに悪人が多い。

 そんなもん、ただの当り前だろうが。


 王族だったら、偉そうな貴族にムカつかねぇとでも?

 そいつは、いったい、どんな勘違いだ?






 俺は、別に、青が赤に見えているわけじゃねぇぜ?






「ムカつくやつは、簡単に殺したくなかった。それだけの話だ。それ以上でも、それ以下でもねぇ」



「わたしのこと……」


「あぁ?」



「ムカついていたでしょ」



「……」



「なんで……何もせずに……殺そうとしたの?」




 勇者は、歯噛みした。

 気分が悪い。


 心底から思う。

 なんで、俺は、こいつを殺しちゃいけねぇんだ。





 ――こういうヤツをこそ、俺は殺さないといけないのに――




「……答える義理がねぇ」



 そう答えるのが、精一杯だった。









 ※


 たとえば、の話をしよう。

 あくまでも、『たとえば』の話だが、


 優し過ぎる人間がいたとしよう。

 あまりにも優しすぎて、心が壊れている人。


 何度も言うが、あくまでも、たとえば、だ。

 特定の誰かについて語っているわけじゃない。



 たとえば、

 その手で救える数は限られていると理解できるだけの頭があって、

 どれだけ頑張っても、この世界は穢れた罪の上に成り立つ楼閣でしかないという、

 その事実が、『本当の意味』で理解ができてしまうほどの頭があって、

 けれど、現実という理不尽の重さに耐えられるほど『強く』はなくて、

 その上で、

 こんな、世界中のいたる所で不幸が蔓延しているような、

 あまりにも救われない世界に生まれてきた、あんまりにも優し過ぎる者は、

 常軌を逸して『心』が優し過ぎるあまり、ズタボロに壊れてしまった人は、


 いったい、どうなるのだろう?

 何を思い、何をするのだろう。







 ――これ以上、苦しむ前に、


 ――せめて、苦しませずに……







 あくまでも、

 たとえば、の話だ。



 特定の誰かの話はしていない。




 

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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
ハルスあたりの話は定期的に読み返すほど、とても大好きです。
[一言] 主人公が変更されてて草
[気になる点] ハルスの独善的な正義はセイバーに似ているし、Z-OMEGAことオメガさんは天童くんみたいな指揮能力を持っていて、オメガの中の主人公達は欠片になっても色々な場所で出ていますね。 もしゾメ…
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