38話 カンツちゃんどいて、そいつ殺せない。
38話 カンツちゃんどいて、そいつ殺せない。
『どうせ、タイムリープでリセットされるから、このチャンスに、5~6回ぐらいは、マジで殺してやろう。そういう気持ちでいた方が、十席もマジで守ろうとするだろうし、最後の最後では、ためらわずに俺を殺すだろう。つまり、この殺気はジャスティス。田中をガチで殺しにかかることは、世界のため! 俺は悪くない! 俺は正しい!』という、ちゃんと最低な想いを胸に、
センは、
「田中を殺し、シュブを呼び、世界を終わらせる! それ以外に、俺の怒りを慰めるすべはない! というわけで、カンツちゃんどいて、そいつ殺せない」
「このほとばしる殺気っ! 冗談の類ではない! いかん! 全員で、田中を守るぞ! センは、本気で田中を殺す気だ! ハスターに操られているだけ、という可能性もあるが――」
と、推測を口にしようとしたカンツに、センが、
「そうだ! 俺はハスターに操られているだけぇえ! ほんとは、田中を殺したいなんて思ってないんだよぉお! だから、手加減しろぉおお! 手加減どころか、もはや、俺に殺されろ! ハスターに操られて可哀そうな俺の邪魔するなぁ! 田中を! 殺させろぉおおおおお!」
そう叫びながら、センは、カンツをボコボコにしていく。
最高格のコスモゾーンレリック『ハスター』によって存在値が1000近くまで上がっているセン。
数値だけを見ても、なかなかとんでもないのだが、
センエースの最もえげつない点は、やはり、『泥臭い根性』。
カンツも、『根性』で言えば、誰にも負けないと自負しており、事実、カンツの根性は異次元の領域にあるわけだが、しかし、今回ばかりは、さすがに、相手が悪すぎた。
(強い……センのやつ……ハスターの助力で、オーラや魔力が膨らんでいるが……それ以上に、メンタルがエグすぎる。このワシを……胆力で押し負かすとは……尋常ではない器……っ)
センエースの異常な迫力に気圧されていくカンツ。
「カンツぅうう! どけっつってんだろぉ! 俺は、絶対に田中を殺したるんじゃぁああああ! 死んでも殺すぅうう! 俺を止めたかったら、俺を殺せぇええええええ! お前らごときじゃ無理だけどなぁああああ!」
サイコなキチ〇イを徹底するセンエース。
その迫力は、決して『演技どうこう』の話ではない。
もう、とにかく、眼力が違った。
もはや、人間の顔ではない。
このとてつもない覇気と殺気に対し、
神話生物研究会の面々は、全力を賭す覚悟を決めた。
神話生物研究会の面々は、どいつもこいつも、大小差はあれど、『精神』に『潔癖さ』を宿している。
ゆえに、先ほどまでは、ギリギリ、
『田中に殺気を向けているとはいえ、同級生であるセンを殺すというのは、いかがなものか』という考えをもっていた。
だが、センの胆力を前にして、その甘い考えが霧散していく。
そんなぬるいことを考えていてはセンを止めることは出来ない。
カンツが、心にガツンと気合を入れて、
「全力でセンを止める! フォーメーションTをKで運用!! ワシに全部をよこせ! 何がなんでもこいつを止める! セン! 悪いが、両手両足をもらうぞ!」
「だから、俺を止めたかったら俺を殺せっつってんだろぉおお! 首だけになっても、俺は動き続けるんだよぉおお! 田中を殺すまではなぁあああああああ!」




