22話 兆。
22話 兆。
「君らの力を、仮に、500~900ぐらいだとしよう。その時、僕の数値が、いったい、どのぐらいか……ちょっと、予想してみようか。言ってごらん、ゴリラボーイ。僕は、どのぐらいだと思う? あ、ちなみにヒントを言っておくと、1000という数字は、なかなか超えられないよ。最強格のGOOでも1000は超えていないからね。超えられない壁が1000。1000をこえたら大したもん。それを踏まえた上で、さあ、予想を言ってみよう」
「…………10000」
対峙してみた感覚をもとにして、
カンツは、予想を口にした。
カンツはバカじゃない。
ニャルがエゲつない実力者であることはすでに理解できている。
というか、最初から、オーラがハンパじゃないのでわかっていた。
ニャルはとてつもなく強い化け物。
それをちゃんと踏まえた上で、
だからこそ、10000という桁違いの数字を口にした。
そこには『流石に、それよりは下だよ』という反応を期待している部分もあった。
『正解は2000だよ』ぐらいのことを言ってもらいたい、というのが本音だった。
そんなカンツに、
ニャルはニィっと黒く微笑んで、
「1700兆ぐらいだよ」
「……」
一瞬、カンツは、何を言われているのか、理解できなかった。
『ちょう? ちょうってなんだ?』
と、脳がバグった。
(1700? 1700は、かなりすごい数字だと思うんだが……1700ちょ……ちょう? ちょう……?)
この場にいる、田中以外の全員が、数秒フリーズした。
なかなか理解できなかった。
理解しようと頑張るのだが、脳が、拒絶していた。
数秒が経過したところで、
最初にアクバートが、
「ちょう……というのは、まさか……億の次の単位……の……兆か?」
と、核心に斬りこんでいった。
『そんなわけがないだろう』と思っている者が、この場にいる大半。
『そうじゃないと言ってくれ』と願っている者が、もう半分。
そんな彼・彼女らに、ニャルは、
「今の僕の存在値は、1700兆。君たちの、ざっと2兆倍ほど強いのが、この僕だよ。ちなみに、その数字は、決して全力の数字ではないよ。本気の本気を出せば、普通にその10倍以上の出力は出せるからね」
「……」
「言っただろ? 僕は最強のアウターゴッドだって。次元違いの力を持つ化け物『アウターゴッド』の中でも最強を名乗るには、そのぐらいはぶっちぎってないとダメってこと」
そこで、カンツが、歯ぎしりしながら、
「そ、そんな、むちゃくちゃな話があってたまるかぁあああっ!」
と、叫びながら、
改めて、全力の拳を、ニャルの顔面に叩き込んでいく。
二回目も、ニャルは、ピクリとも動かず、微笑みを浮かべたまま、カンツの拳を顔面で受け止めた。
先ほどと同じで、硬いとも柔らかいとも言えない、妙な感覚だけが拳に残る。
カンツは、
「うららららあぁあああああああ!」
そのまま、何度も、何度も、何度も、全力の拳を、
ニャルの顔面に叩き込む。
その拳の嵐を、ニャルは、
扇風機の微風でもあびているみたいに、
かるぅく目を細めているだけで、すべて受け止めきった。




