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37話 本気の対話

 37話 本気の対話



「……何をって……ぃや……」


 口ごもるサリエリに、

 ラムドは、少しだけ強い視線を送り、


「国にも世界にも興味がない、召喚で頭がいっぱいの召喚バカ? それとも、エサさえ与えておけば、問題なく利用できる便利な戦略兵器か?」


「……」


「ははっ、そんな顔するなよ、サリエリ」


 目は笑っていないが、声は少しほがらかに、


「バカにするな、なんて言うつもりはない。お前らは、他国の連中も含めて、まるごと全員、俺の掌の上で踊っただけだ。俺の意思どおりに『俺のことをバカにしていただけ』の、とんでもない大馬鹿野郎。それがお前らだ」



「貴様……ずっと……騙していたというのか……諸外国を……私や陛下さえも……」



 怒りのこもった目で睨みつけてくるサリエリ。

 そんな彼に、ラムドは冷めた目を向けて、


「敵を騙すにはまず味方から。ただの定石だ。というか、味方の策略を非難する前に、味方の本質を見抜けなかった自分の罪を数えろ、バカ」


 そこで、リーンが、


「味方だと! ふざけるな! 今の魔王国にとって、貴様ほどの敵はいない! 分かっているのか、ラムド! 貴様は、魔王国史上最悪の大罪人だ! 後世の歴史家は、こぞって、魔王国を悪の根源扱いするだろう! 国民は蹂躙される! ワシが必死に守ってきたものは、全て――」


「何を根拠にそんなことを?」


「人類すべてが敵となったからだ! 人類が……総出で巨大な連合軍をつくり、我々にキバを剥くことが確定しているから……だ……」


 リーンは自分の発した言葉の悲惨さに、また涙を流した。

 あまりの辛さに、つい一瞬、うつむいてしまったけれど、

 しかし、すぐに歯を食いしばって、キっとラムドを睨み、


「多くの血が流れる! そして負ける! ズタズタにされる! トーンは大国だ! トーンだけでも、軍事力なら我ら魔王国とほぼ同等! だというのに、セアとミルスが、全力でトーンを支援する! 勝てるわけがない!」


「確かに、トーンは大国ですなぁ。しかし、負けるとは限りません。セファイルとともに、古き列強諸国を叩きましょう。やつらに目にモノ見せて――」


「セファイルは、タイミングを見て、我々との同盟を破棄し、あっさり向こうにつくだろう! 恐怖で繋いだ糸は、感情に引き千切られると相場が決まっている! 我々に味方はいない! 孤立無援! 魔王国は、貴様のせいで、世界の敵となった!」


「セファイルだけではなく、一応、フーマーも味方ですが?」


「アホかぁああ! フーマーは何もしない! あんな連中、敵でも味方でもない!」


「まあ、それは確かに」


「かの国は、戦争には加担しない! 実質的・本質的・根源的にはフーマーの属国であったカル大帝国も、追い込まれた最後の最後は、やはりフーマーに救援を求めたものの、フーマーは結局、何もしなかった。そして、後から出てきて、戦利品だけをかっさらっていった! フーマーとはそういう国だ!」


 敵でも味方でもない、枠外の存在。

 領域外の観測者であり、不可侵の調停者。


「わかるか、ラムド! 我々に味方はいない! つまり、負ける! 全て壊されるのだ!」


(味方がいないから負けるって発想が、俺的には、かなり気に入らないが……まあ、別にそこはいいさ。思想はそれぞれだ)


「お前は確かに強いが、それがどうしたぁあ! スリーピース・カースソルジャーだって無敵ではない! 国単位で挑めば、数の暴力でどうにかできる! セアだけでも、人的資源を総動員した秘術や禁術を駆使することで、あの三体を抑える事は可能!」


 どの国にも文化があり、誇りがあり、命の繋がりがあり、だから、それを守るための暴力装置がある。


 祖国のためならば、正義のためならば、人類のためならば、

 ――家族のためならば、なんでもできる――


 闘う理由を持たない者の方が少ない。

 闘う理由は人を奮い立たせる。

 闘う理由が命を狂わせる。


 リーンは、『その強さ』の価値と恐さを知っている。



「貴様がセアあるいはミルスに抑え込まれれば、あとに残るのは、『トーン+他国』VS『魔王国』という、絶対に勝ち目のない悲惨な地獄だけだ!」




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