9話 蝉原がパーフェクトコスモゾーンのアンサーに届いて、すべての命が自由になるの。
9話 蝉原がパーフェクトコスモゾーンのアンサーに届いて、すべての命が自由になるの。
「今、貴様の細胞は、この過酷な環境に対して、単純な衝撃を感じている段階に過ぎない……しかし、いずれ気づくだろう。これが、『長期間にわたって続くのだ』ということに。すべての細胞が、『この状況に対応しなければならない』という気付きを経てからが、貴様の進化の始まり」
「あっぎゃぎゃぎゃぎゃがあああああ!」
「人間の細胞は3か月で全て入れ替わる。人は、いつでも生まれ変われる。しかし、新しい刺激がなければ、3か月後に、『3か月分老化しただけの劣化細胞』へと緩やかに推移するだけ。つまりは、ただ衰えていくだけ。それでは、何もかえられない」
「どぐぅぁあああっ! ぎゃおあらぁあああああ!」
「蝉原。今、貴様が体験している地獄は、進化のための通過儀礼。繰り返し行われる魂魄超回復の過程で、貴様の偽遺伝子とジャンクDNAに革命的な変位を起こす。いずれ、貴様という概念を構成する『全部』が『理解』する。『このままではダメだ』という事実に。そして、その気づきは、そのままのサイズ感をもって、貴様の器になっていくのだ。ワクワクするだろう? 貴様ほどの才能を持つ者が、真なる絶望を乗り越えた時、どれだけの質量を持つようになるのか」
「ふんならばぁああああ、でんびゃああああああああっ!」
「感じるぞ、蝉原。貴様を構成している全てが、今、激しく沸騰している。ほどなくして、貴様は、『これまでの貴様』を遥かに超越した『新しい命』へと生まれ変わるだろう。耳をすましてごらん。聞こえるだろう。かすかだが、確かな進化の足音が」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「……やかましいな。少し静かにできないか? うるさくて、進化の足音が聞こえない」
「てめぇ、しばくぞぉおおおお!! ナメたことぬかしやがってぇええええ! 俺を黙らせたかったら、これ、止めろぉおお! 殺すぞぉおおお!」
「おっと……はやくも、適応しはじめているのか。さすがだ、蝉原。貴様は本当に天才だ。細胞からして激しく優れている。貴様ならば、確実に、数世代先の命へと進化できる」
「これ、さすがに、キツすぎるぅうううう! もう勘弁してくれぇええええ! 頼むから、殺してくれぇえええええええええええええええええええええ!」
「安心しろ。『私を扱えるようになった』と判断できたタイミングで完璧に殺してやる。完全なる死を経て、貴様は、真に究極の個――『純粋結論』へと昇華し……センエースを殺すだろう。その時、真実の終焉が完遂され――すべての命が――自由になるのだ」




