4話 原初のソウルゲート。
4話 原初のソウルゲート。
「センエース以外では、センエースには勝てない……そう思っていたのだが、成長した
貴様を見て考えが変わった。貴様なら超えられる。貴様は、センエースを殺せる」
「……ふふ……俺は、ずっと、『蝉原勇吾という男は扱いにくい』と思っていたんだけど、どうやら、存外、扱いやすい男だったみたいだ。俺ならセンエースを殺せると言ってくれた……その言葉に震えている自分が確かにいる。世界中見渡しても、俺のことを、それだけ評価してくれるのは、あんたぐらいだろう」
そこで、蝉原は天を仰いで、
「利用されるのは癪だし、俺のことだから、たぶん、どっかで裏切るだろうけれど……今、この瞬間だけは、誠実に、あんたと交渉してあげる。……あんたの望みどおり、あんたを支配できるぐらい、頑張ってみるよ」
「よし、そうと決まったら、さっそく修行を開始しよう。今のままでは正直話にならない。純粋に、戦闘力が低すぎるし、もろもろ、『厚み』がなさすぎる」
「ディスってくれるねぇ。まあ、ソルDPに手も足も出なかったという事実があるから、何も文句は言えないけれど」
「ざっと計算したところ……貴様が私を完璧に扱えるようになるまで……最低でも……32億年は必要だろう」
「さ……さんじゅう……」
ソルの口から飛び出した数字に、顔をヒクつかせる蝉原。
「いや、あの……申し訳ないんだけれど……俺は、センくんとは違うから、『億年』単位での修行とかは出来ないんだよね。いや、頑張りたいって言ったのは本当だよ? でも、純粋に無理なんだよ。それだけの時間に耐えることは出来ない。謙遜ではなく、事実無理なんだ。それだけの数字を使ってしまうと、俺は確実に灰になってしまう」
「そんなことは分かっている。貴様の精神力では250万年が限界だ。その数字は、なかなか大したものなのだが、『センエースの敵』が積む時間としては、正直言って、お話にならない。というわけで、貴様には、『特殊仕様ソウルゲート』を用意した」
そう言いながら、地面を何度か踏みしめるソル。
続けて、
「どれだけ心が折れても、灰になって脱落することができない特殊な場所。名前は、ソウルゲート・オリジン。『折れたら灰になってしまうアリア・ギアス』が『無効』の状態だと、貴様が折れるたびに、私の中の『修理スピリット』が目減りしていくし、『中で何年過ごしても外の時間では一瞬』という特典が薄くなるし、そもそも修行効果がガクッと落ちるから、本来の10倍以上の修行時間が必要になるし、軽いサイコジョーカーがずっと続いているような感じになるから、想像の斜め上の地獄をとことん味わうだろうが、センエースを倒せるなら、その程度の無間地獄は許容範囲だろう」
「32億の10倍……つまり、320億年もの間、ずっとサイコジョーカーに耐えろって? は、はは……ちょっと、何言っているか、分からないなぁ……それって、俗にいうところの、無間地獄ってやつじゃないかな?」
想像するだけでも失神しそうだった。
どうやら、脳が『理解すること』を拒絶しているみたい。
回転速度が極端に遅くなる。
――無崎に裁かれた木室のフラグメントは、今後、永遠に地獄を見続ける。




