42話 オリジナル。
42話 オリジナル。
「流石に『薄すぎる』かな。俺の無崎性よりも、さらに薄い。ヌルの感情ブースターとしての役割以外を期待されていない、出来損ない用のハズレヒロイン。……『ゴリゴリの酒神シリーズ』が相手だと、流石の俺でも多少は苦戦するだろうけれど……お前は所詮、出来の悪いお人形さんだ……俺どころか、あそこにいる元主人公たちよりも精度の低い、隠し味程度の極小フラグメントしか持たない、ガワだけの、安いハリボテ」
そのあおりに対し、
ボロボロの酒神は、
「あんただって……ただのハリボテ……」
最低限の返しを見せてくる彼女に、
蝉原は、
「――俺はオリジナルだよ、酒神」
と、なかなか衝撃的な事実をかましてくる。
「……より正確に言うのであれば、『オリジナルと統合された俺』だね。俺は……『俺たち』は、『過程』にこだわらない。いや、もちろん、たまには、過程にこだわりたい時もあるけれど、『本質を追及する際』には、ゴールしか見えなくなる、猪突猛進タイプなんだ」
ごちゃごちゃと、自分語りをしてから、
「お前らが、純粋無垢な自己鍛錬に励んでいる間、俺は、ずっと、『ありとあらゆる場所に散っていた俺のフラグメント』を回収していた。カケラの一部としてうごめくだけではなく、すべての俺を回収し、完全なる一つになることを望んだからだ。蝉原勇吾という男は現金で分かりやすいから、話は早かったよ。誰がベースになるかでもめたりしない。一番出来のいいヤツがやればいいだけの話」
「……」
「蝉原勇吾は、センエースの心を折ったことがある男だ。その称号を持つ者は、この世でたった二人しかいない。全世界最高格の偉業を成し遂げたことがあるほどの男を……ナメちゃダメだろ、常識的に考えて」
最後にそう言ってから、
蝉原は、酒神の心臓を貫く。
彼女の心臓をグバっと握りつぶしてから、
バクリと、頭から丸のみ。
「お、お、おお、おおおおおっっ! ……『極小フラグメント』とはいえ、さすが、酒神シリーズ。しっかりと膨れ上がったな……」
10人の弟子全員を奪い取り、
大幅に強化された蝉原に対し、
これまで、ずっと蝉原のサポート役に徹していたカミノが、
「……そろそろ、ヌルの封印がとけそうだ……蝉原。ここまでは、かるいウォーミングアップにすぎない。ここからが本番だ。気合い入れてくれ」
などと言いながら、心の中で、
(蝉原が、想定していたよりもだいぶ強化された……酒神と超苺には、もう少し苦戦すると思っていたが、ありえないぐらい楽勝だったな。……これなら、かなり、ヌルに肉薄するかも……いや、それどころか、下手したら、致命傷の一つでも与えることができるんじゃ……できれば、同士討ちしてほしいところだが……流石に、そこまでの運命力を、蝉原は持っていないか……)
などと思っているカミノ。
そんなカミノの『ガラ空きの背中』を見た蝉原は、
ニィっと、黒く笑って、
――ほぼ、一瞬のうちに間をつめると、
ガバァアっと口を開いて、
カミノを丸のみに――




