24話 理不尽な高潔という宇宙規模の矛盾。
24話 理不尽な高潔という宇宙規模の矛盾。
「感じるぞ、ヨグ……さっさと帰ってこい。疲れているかどうかなんざ知らん。難しいかどうかも聞いてねぇ。とっとと、俺の手の中に戻れ。これは俺の命令だ。舞い散る閃光センエース様の命令をシカトするなんざ許さねぇ」
「……やれやれ、なんと厄介な神様か。呆れるほど自己中心的で嘘つきで根暗で高圧的な、最低な神様。けれど、まあ、そのぐらいでなければ、守れないものもあるだろう」
センエースのワガママに対して『深い理解』を示す、外なる神のハイエンド。
ヨグ=ソトースは、途切れかけた意志を、
気力だけで、なんとか、現世につなぎとめて、
「……言っておくが、今の私では、貴様を補強できないぞ。むしろ、私を支えてもらうことになる」
「てめぇに火力は期待してねぇ。ただ、造形が気に入っているから戻ってこいと命令しただけだ。俺というカッコいい修羅を飾る、最高品質のブランド品として、黙って装備されていやがれ」
その命令を遵守して、ナイフの形状になるヨグ。
センの手の中におさまった『図虚空』は、ハッキリ言って、ゴミみたいな性能だった。
「どうだ、セン。今の私は、冗談ではなく、『ひのきのぼう』と大差ないだろう?」
などと言ってくるヨグに、
センは、
「ひのきのぼうをナメんなよ。ドラ〇エ5においては、『幼少期ゲマが4096分の1で落とす逸品』という、レア度で言えば、作中最高のアイテムだぞ」
「……だ、だから、なんだ?」
「言ってみたかっただけだ。俺の言葉に一々反応するんじゃねぇ。基本、別に、大したこと言ってねぇんだから、デフォルトでスルー設定にしておけ」
などと口にしながら、
センは、ナイフをきらめかせて、
壊れたナグモと対峙する。
攻撃力はゴミだが、耐久性は破格。
さすがは、全世界最高峰のバイタリティを誇る、アウターゴッドの王様。
そこらのナイフなら、変形したり、ヘシ折れたり、ひん曲がったりしてしまうほどの攻撃をくりだしても、ヨグナイフは綺麗な形をたもっていた。
中身はカラッポだが、決して壊れないコズミックホラーな器。
自分にふさわしい――なんて、センは、そんなことを考える。
それからのセンは没頭した。
壊れたナグモを殺すために出来ることは何か、
と、それだけを考える、まことの修羅となる。
センは、必死になって、壊れたナグモを削ろうとするのだが、しかし、いかんせん、攻撃力が低すぎて、どれだけ切りつけても、すぐに再生してしまう。
中心を狙おうにも、今のスキルでは、まったくもって届かない。
というわけで、センは世界にワガママをつきつけることにした。
「時間よ。少し進むのが速いな。壊れたナグモも含めていいから、もっと遅くなれ。この俺様の命令だ。無視するなよ」
人間失格の裏効果、
世界に対して『パワハラなワガママ(デバッグコマンド)』を言えるようになる。
高潔な者は、無茶なワガママを口にすることはできないが、その部分のマイナスを補うことができるのが人間失格。
病的な高潔を持つ者は、普通、はばかられるので、極端なワガママクソ野郎にはなれないが、人間失格があることで、狂気のワガママを口に出すことが可能となる。
あくまでも『ワガママを口にできる』というだけの話であり、そのワガママを世界が聞いてくれるかは別の話。
決して、『ワガママを強制できる力』ではない。
そんなチートが、センエースの器になるわけがない。




