75話 善良で平凡で温和な一市民でしかないセンエースさんに対する鬼畜の諸行。
75話 善良で平凡で温和な一市民でしかないセンエースさんに対する鬼畜の諸行。
「田中ぁあ! てめぇ、恥ずかしくないのかぁ! 『先天的に生命体カーストの頂点である』ということを、嬉し気にふりかざして、下民の努力を、戯れでふみにじって! お前がやっていることはあれだぞ! 『賽の河原の鬼』みたいなもんだぞ! 子供が一生懸命積み上げてきた石を無慈悲に蹴飛ばして! それの何が楽しいんだ! 鬼畜! 鬼の子! 最低の外道! 血も涙もないゲス野郎!」
血の涙を流して叫ぶセン。
そこで、田中は、ウザそうな顔で、
一瞬だけ振り返り、センに向かって中指をたてた。
それを見たセンは、さらに激昂し、
「あっ! あのやろう、中指たてたぞ! みんな、見たか?! あいつ、あろうことか、なんの罪もない『善良で平凡で温和な一市民』でしかないこの俺に、中指たてやがった! 信じられねぇ! 人格が終わっていやがる! 天才で生まれると、あんなにも歪んでしまうものなのか! あいつはもうダメだ! こうなったら、全員で袋にしちまおう! 俺が命を賭して、あいつをとめるから、誰か、あのゲス野郎に、乾坤一擲の一撃を叩き込んでくれ!」
などとわめいているセンの視線の先で、
ウムルの体がホロホロと粒子状に溶けていく。
「――強者は華。堅陣な魂魄は土――」
粒子状になったウムルの肉体が圧縮されていく。
そして、そのまま、深く洗練されていく。
「――審判のアリア・ギアス発動――」
宣言の直後、ウムルの生命力が、グっと厚みをました。
敗北でしか届かない領域にいたる。
ウムルだった粒子は、あたらしい形を成していく。
完成したのは、黒い刀だった。
その刀を手に取った田中は、
「……コスモゾーンレリック『ウムル=ラト』……最高位GOOのコスモゾーンレリックだけあって、なかなかエゲつないスペックやないか……気に入った」
凶悪な性能を誇るコスモゾーンレリックと契約をかわしたことで、
田中の存在値が一気に跳ね上がる。
『当人の資質』という点でのスペックが、すでに最強格を誇るというのに、
強大な力を持つ携帯ドラゴンを駆り、
莫大な可能性を有するコスモゾーンレリックをも手に入れてしまった。
ほとんど初期状態でありながら、しかし、田中は、すでに、圧倒的人類最強。
『この事実』を、頭のいい特待生たちは、正式に理解していた。
だから、普通に震撼して、つい、言葉を失ってしまった。
信じられないほどの力を持つ天才の登場。
何をどう言えばいいのか分からず、ただただ立ち尽くしてしまう。
そんな微妙な空気を切り裂いたのはカンツ。
ゆっくりと、田中のもとまで歩を進めて、
「まずは、脅威を退けてくれたこと、感謝しよう。田中シャインピース。お前の才能と運命は美しい」
枕を並べてから、
「最高位のGOOを単騎で退ける力を持つとは……それも、携帯ドラゴンと契約した直後に……正直信じられん……ワシは、時折、化け物という評価をいただくわけだが、そんなワシなんかよりも、お前の方がよっぽど化け物だな、田中シャインピース」




