51話 小馬鹿にしていても、最後には、結局頼ってしまうファントムトーク。
51話 小馬鹿にしていても、最後には、結局頼ってしまうファントムトーク。
「もっと、必死に交渉しろ! とにかく、まずは、溶けるほどに、ウムルさんの靴をなめるんだよ! そうやって下手にでるところからスタートだ! こんな当たり前のこと言わせんな、カス! ご自慢の『優れた魂』とやらをフルで使って、俺を生きのこらせろ! それすら出来ないお前に何の価値がある! 恥を知れ!」
「ほんまに、こいつ、ゴミやなぁ……反論の余地がない……」
そう言いながら、
田中は、剣を掴んでいる手にギュっと力を込める。
「セン。お前を殺さんと、ワシの未来がなさそうやから、悪いけど、殺させてもらうで。化けて出んといてな。お祓いするんがめんどいから」
「鬼畜生! お前には人の心がないのか! 地獄に堕ちるぞ! 考え直せ! 今なら、まだやりなおせる!」
「残念やけど、考えを変えることは――だありゃぁあああああっ!」
おしゃべりの途中、
田中は、一気に体を反転させて、
センではなく、
ウムルに切りかかった。
最初で最後のチャンスとばかりに、
全身全霊を込めて切りかかった――が、
まあ、当然、
「……貴様からは、高い知性を感じたのだが……どうやら、私の勘違いだったらしいな」
田中の切り込みに対して、ウムルは、一切、避けることはなかった。
ウムルの体に、田中の一撃は、しっかりと食い込んでいたのだが、
しかし、まるで、水に刃物を向けたみたいに、手ごたえというものが、まるでなかった。
「私は、魔力のコントロールが、そこらのGOOとは比べ物にならないぐらい上手いのでね。自分の魔力を練り上げてつくった武器と調和することなど寝ていても出来る」
「……あーらら……」
渋い顔で、そうつぶやく田中。
田中は、剣をおさめてから、
不器用な笑顔を浮かべて、
「いや、まあ、冗談やけどね。……ちょっとした冗談やから、怒らんといてな。あくまでも、脆弱な人間の、お茶目が炸裂しただけやから。こんなんで本気で怒っとったら、器のたかが知れてまうで」
センにならって、ファントムトークで、どうにか、場をいさめようとするが、
ウムルは、容赦なく、指にオーラを込めて、
トンッっと、田中の肩を貫く。
「ぐっがぁああ!」
「これは、最後のチャンスだ。そのガキを殺せ。私に歯向かうな。そうすれば、貴様には未来が――」
と、チャンスをもらっていながら、
しかし田中は、
「ずぁああああっ!」
と、2本の指に心を込めて、
ウムルの眼球に、全身全霊の目潰しをかましていく。
ウムルの眼球に、指が当たったと同時、
田中は、
「ぎゃああああああああああっ!」
と、爆音の悲鳴を上げた。
田中の指は、90度以上に反り返っていた。
パッキリと骨折。
ウムルは眼球の強度もハンパなかった。
「私が、これだけ譲歩するというのは、滅多にないのだが、そんな私からの、最後のチャンスにすら、ツバを吐いてくるとは……なかなかの気構えだな」
そう言いながら、
ウムルは、両手に魔力をためていく。
「不愉快なバカガキども……貴様らの相手は、もう飽きた」
最後にそう言って、
小規模の異次元砲で、二人を吹っ飛ばそうとした、
――その時、
「……ガチやべぇ根性してるじゃねぇか! 気に入ったぞ、田中!」
空から、『だいぶ小柄な同級生』が降ってきて、
ウムルの頭頂部に、ガツンッと、全力のワンパンを決め込んだ。




