39話 世界を導くメシア。
39話 世界を導くメシア。
『あ、なんかちょとやばくなってきたかも……ここまでくると、ダルいな……』
と、普通に狼狽することになった支配者T。
結果、Tは、『ちょっと、いったん、放置しよう。放っておけば、忘れてくれるだろう』という精神のもと、一か月ほど、300人委員会をシカトした。
それが最大の最悪手だった。放置されたメンバーは、『Tに見捨てられないため』に、奉仕の量を増やすことになる。
300人委員会に所属しているメンバーの中で、
『懐疑的な一部の層』にとって、
Tは、『謎のカミナリを落とせる化け物』でしかないが、
しかし、『ほとんどの信者』にとってTは、
『世界を導く救世主』という誇大妄想にまで膨れ上がっていた。
『ウワサ』という概念には『都合のいい尾ひれ』がつくもの。
『信じたい人にとって重要な尾ひれ』が勝手に装飾されていく。
姿を見せない救世主の影は、狂信者の妄想の上で、どんどん膨らんでいく。
カルトは加速する。
Tは、はからずも、カルト教祖として、完璧なムーブをとってしまっていた。
信者たちは、勝手に暴走する。
姿を見せなくなった教祖を取り戻すため、遮二無二、働き始める。
その結果『もともと存在していた、300人委員会の元ネタ』的な組織である『神話生物対策委員会』まで、飲み込んでしまうことになる。
『神話生物対策委員会』は、元々、中世時代の貴族が設立した組織。
コズミックホラーは、遥か昔から、地球を脅かしていた。
脆弱な地球人が、神格に対策するためにつくられた人類の最終防衛ライン。
地下に特別な龍脈が流れている『時空桐作学園』の実質的な統治者でもあった。
時空桐作学園に存在する謎の部活動『神話生物研究会』は、『神話生物対策委員会』の中核組織であり、実行メンバーである。
恐ろしい速度で世界の裏側を浸食し始めた『T300人委員会』に対し、神話生物対策委員会は、最初、最強格のオーパーツである『携帯ドラゴン』や『コスモゾーンレリック』の力を使って、対抗しようとした。
『ワケの分からんカルト』が、自分達の、『これまでの功績』を、横から奪って食い散らかそうとしているのだから、抵抗しようとするのは当然の話。
――ただ、神話生物対策委員会には、『いくつかの重大な問題点』があったため、
T300人委員会を潰すことはできなかった。
その『重大な問題』の一つが、携帯ドラゴンの継承システム。
『卒業するときに、【携帯ドラゴンの経験値】を後輩に継承するシステム』が強制執行されているため、実のところ、神話生物対策委員会のメンバーである『卒業生』は、『強力な携帯ドラゴン』を持っていない。
初期ステの携帯ドラゴンでも、それなりに出来ることは多いのだが、しかし、ハッキリ言って、強くはない。
『奉仕種族だったら、ギリ、どうにかできるか』ぐらいのものでしかない。
だから、神話生物対策委員会を支配している『卒業生』たちは、Tを力技でどうにかすることができなかった。
――いや、やろうと思えばできた。
情報がシッカリと集まっているのであれば、
所詮、Tは、一日に一回、カミナリを落とせるだけの凡人なので、
殺すことは不可能ではなかった。
――しかし、『膨れ上がった疑心暗鬼』が、神話生物対策委員会に二の足を踏ませた。
……本来であれば、『確実性が高く安全な策』であるところの、『現行メンバーに対する、Tの抹殺命令』を出すのだが、しかし、現在の現行メンバーである『25人の神話狩り』は、全員、自己中心がエグい、まったく命令を聞かない連中だった。
『気の弱いヤツ』も何名かいるが、しかし、そういうやつらですら、『命令』に対して反抗的な態度を示してきた。
彼・彼女らの中心には、一本の筋が通っていた。
とても一介の高校生とは思えない、鋼の信念。




