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12話 平和を望む意志

 12話 平和を望む意志


 魔王国は、一応、フーマーに認められた国家なので、これまでは、理由なき搾取はできなったが、勇者の暴挙で、『理由』ができた。

 ならば、あとは奪うだけ。

 現状は、それだけの話。



 ――セアとミルスの代表が、わざとらしくアゴをしゃくりつつ、


「なぜ、勇者が死なねばならなかったのか……この悲劇の責任は誰が取るのか」

「さて、魔王国の女王リーン・サクリファイス・ゾーン。どう言い逃れする? それとも、非を認めて謝罪するか?」



 そのふざけた詰問に、リーンは肩を震わせ、


「我が国の……被害が……どのくらいだと……」


 キっと、各国の首脳を睨みつけ、


「わしは……さ、最悪、謝罪がなくともよいと思ってここにきた。今後、二度と……二度と、我が国の民が危機にひんする事がないと信じる事ができる話し会いが出来たならば、そ、それでよいと思って……」


「実現したいな。誰も争わなくてすむ平和を、ぜひ実現したいと思う。そのためには、今、この場で、『ダレ』の『ナニ』が最も必要とされているのか、貴女ならば理解できているだろう?」


 そこで、各国の代表達は、たたみかけるように、


「具体的に言えば、補償金が必要だ」

「魔王国は、人類の宝を奪った。その補填として、金貨20万枚を要求する」

「それと、魔石をもう少し優遇してもらいたいな」

「我々が、大帝国との戦争の際に協力した見返りも、少し増やしてもらおうか。まだ返還されていない金貨6万枚を、キリよく10万枚にして一括返済してもらう」



「なにを、バカな……なぜ、侵略行為を受けた我々が……」



 唖然とした顔になったリーン。

 サリエリも茫然としていた。

 若干アタマが弱いサリエリは、今、何が起きているか理解すらできていない。

 ただ、場の空気感から、自分たちが責められている事は理解した。

 そのため、『どういうことだ? なんでこちらが悪いみたいに言われている?』と純粋に困惑している。



 『分かっていない』のはサリエリだけで、

 ここにいる魔王国以外のメンツは、もちろん、全員、

 『自分たちがむちゃくちゃな事を言っている』と理解できている。


 つまり、大事な事は真実や正義ではない。

 外交という戦争でどちらが勝つか。


 そして、みな、思っている。

 結果的に、リーンが折れるだろうと。


 もちろん、すんなりとはいかないだろう。

 ここから、少しばかりモメるだろうし、魔王国側の言い分を一つ一つ『ちょっと何を言っているか分からない理不尽』で潰していくという大仕事が待っているが、しかし、根気よく続けていけば、いつかは必ず『魔王国が折れるだろう』と、誰もが思っている。


 その理由は非常に単純で明快。

 この中で『最も平和を望んでいる』のは間違いなくリーンだから。

 リーンは本気で世界の平和を望んでいる。


 別に、他国の者が『平和を望んでいない』という訳ではない。

 というか、『戦争がしたくて仕方がない国』というのは現在だと一つもない(トーンは、周囲を飲み込んで『第二の帝国(すなわち覇権国家)』になりたがっているが、今は、備蓄量の問題から、動く時ではないと理解している。ここで、もし、魔王国から、『準備』が整うほど奪えれば、覇権国家への第一歩を踏み出す可能性は高まる)。


 問題は、『どちら』が『より強く平和を望んでいる』か。

 それは、つまり『あと一手で戦争』という時に『どちらが先に折れるか』という事。


 そのチキンレースの敗者が、常に魔王国側になる。

 なぜならば、リーン以上に平和を望んでいる者はこの世に存在しないから。

 それを、ここにいる誰もが理解している。


 リーンが王である限り、魔王国側から戦争をしかけるようなマネは絶対にしない。

 北大陸サイドの言い分がいかに荒唐無稽であろうと、『戦争をする意志はない』という態度を固持し続ければ――ようするには、ただムチャクチャを言い続けてさえいれば、最終的に魔王国は折れるしかなくなる。

 なぜなら、魔王国側から戦争は絶対にはじめないから。


 平和を望む者が食い物にされる。

 それが戦争の常識。


 本物の平和なんて、望む方が悪い。

 というわけで、理不尽は加速する。


 魔王国の心が折れるまで、

 ただひたすらに不条理を叫び続ける。



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