17話 全歴史上最強最高の意地と覚悟。
17話 全歴史上最強最高の意地と覚悟。
「無駄だろう? ちょっとは、彼我の差を考えろ。どうあがいたところで、貴様が私をどうこうすることは不可能だろう? 貴様は海をのみほせるのか? 無理だろう? それなのに、なぜ――」
「必要だったら、海だってのみほしてやるよ。それしか、救いの道がないというのであれば……『神でも持ち上がらない石』ですら持ち上げてみせる」
自分の中にある覚悟を口にする。
道化の仮面をかぶったまま、
魂もプライドも道化に徹したまま、
センは、自分の底意地をむき出しにして、
「不可能だって思うだろ? でもなぁ……その程度の不可能なら、これまで、ずっと可能に変えてきた。それ以上の不可能だって、デアゴス〇ィーニでカウ〇タックをつくるぐらいの感覚で、定期的に、可能へと変えてきた」
ギリギリと、奥歯をかみしめ、
血走った目で、ロイガーをにらみつけ、
「てめぇごときじゃ、絶対に理解すらできない領域で、ずっと、ずっと、もがきあがき、苦しんできた俺の意地を、てめぇごときが終わらせられるなんて夢を見るんじゃねぇぞ、カスが」
「胆力だけは見事。しかし、それ以外は何もないな」
そう言いながら、ロイガーは、
センの右足を手刀でザクリと吹っ飛ばす。
普通なら、バランスを崩して、その場に倒れこみ、激痛の中でもだえ苦しむことしかできないだろうが、
バッキバキの目になっているセンは、
右足を吹っ飛ばされていることを、当然理解しながらも、
しかし、片足だけで、その場に仁王立ちしている。
運動不足の貧弱ボディ、
体幹は普通にゴミのはずなのに、
しかし、センは、『終わっている根性』だけで、自分をその場に張りつけにする。
脂汗を流しながら、しかし、表情の方は、狂気に染めたまま、
まっすぐに、ロイガーをにらみつけている。
その、あまりにも異様な様を目の当たりにしたロイガーは、
「どうやら、壊れているようだな、何かが」
と、軽く引きながら、ボソっと、そうつぶやく。
そして、そのまま、センの両腕をヒュンヒュンと切り刻む。
もはや、バランスもクソもない状態。
左足以外の四肢を全てうしなったセン。
とうぜん、腕とともに、ロイガーソードも地面におちた。
武器も体もなくし……しかし、まだ、それでも、センは、バカみたいに気合いの入った顔で、ロイガーをにらみつけている。
「まだ殺気を放てるのか。意味が分からないな。本当に聞きたいんだが、その状態で、いったい、何ができると思う?」
「ネタバレはしねぇよ。対処されると鬱陶しいから。ここから魅せる俺の逆転の一手に震えて眠れ、三下」
そう宣言すると、
センは、バっと、その場に倒れこみ、
落ちているロイガーソードを口にくわえると、
「ぐぐぐぐぐぬぁあああああっ!」
気合いを叫びながら、
「ぐぅがげっげん(龍牙一閃)!!」
首を豪快に振り回して、ロイガーの足首を切断しようとした。
今の肉体では、グリムアーツなど、当然、使えないわけだが、
しかし、そんなことはどうでもよかった。
叫ばずにはいられなかっただけ。
魂にしみついた全部を吐き出さずにはいられなかっただけ。




