100話 特待生チーム、たいがいのやつが、なんか、ずっと、キレてんな。
100話 特待生チーム、たいがいのやつが、なんか、ずっと、キレてんな。
「ちょっと待って……あれ? これ、もしかして、負ける感じ? ありえないんだけど。カンツ一人に、女子陣が完敗とか、絶対に許せないんだけど……カンツに負けるだけなら……最悪、仕方ない部分もあるけど、バカ兄貴が混じっているチームに負けるとか……そんなの、死んでもありえないからっ! 妹より優れた兄なんて存在しないんだから!」
ベンチで咆哮するアンドレ。
そんな彼女に、隣に座っているカーミライムが、
「カンツに負けるだけなら仕方ない……などと思っているから、このような無様をさらすのではありませんか? わらわのように、『敗北などありえない』と、最初から最後まで永遠に確信していてこそ、はじめて、本物の、絶対的勝利者の人生を歩めるというものですわ」
極めて不遜な態度でふんぞり返って、そう言い切る。
口調こそ、穏やかというか、お嬢様然としているが、
その尊大な態度は、お嬢様ではなく、女王様の風格。
「正当なる銀河の支配者たる、このカーミライム・ヘルファイアがチームの主軸を担っているのですから、このチームが敗北することなど、万に一つもありえませんわ」
「このチームの主軸は、あーしだから。あんたじゃねぇから!」
歯をむき出しにしてキレるアンドレと、
その咆哮を、遥かなる高みにいるかのような表情でいなすカーミライム。
「つぅか、眷属が使えないあんたなんか、ただの非力なお嬢だろ!」
「まあ、眷属を使ったスタイルが主軸なのは事実ですが、しかし、あまり得意ではない単体前衛戦闘でも、あなたよりは遥かに優れた成績を出せるのが、このわらわ。本当に『飛びぬけて優れたスペックを誇っている』と、我ながら、惚れ惚れしてしまいますわね」
「あーしが『本気』を出せば、あんたなんか余裕でワンパンだから!」
「本気って……ほほほ……あなたの場合、兄と合体するだけでしょう? 非力で無能な兄と合体するしか能のない雑魚が、まあ、よく吠えますこと」
そんなことを口にするカーミライム。
アンドレは、迷うことなく、彼女の胸倉を掴み上げて、
「あーしの家族を……バカにしたな……」
ブチギレが止まらない。
特待生は、感情の起伏が激しい者が多い。
胸倉をつかむのが、彼・彼女らのコミュニケーションのベース。
怒りを向けられたカーミライムは、いたってフラットな表情のまま、
「あなたがいつも言っていることを、そのままなぞっただけですわ」
「あたしは身内だから、別にいいんだよ。謙遜しているのと同じだから。けど、あんたが口にすれば、それはただの侮蔑であり、まっすぐな挑発だ。買ってやるよ、そのケンカ。かかってこい。殺してやる」
バチギレの目でそう言うアンドレ。
その剣呑な雰囲気の中に、
カンパネルラが入ってきて、
柔和に微笑みながら、
「さすがに、落ち着いて。いつもそうだけど、あなたとダリィは、粗暴でケンカっ早すぎるわね」
「あんな、なんにでも因縁をつける瞬間湯沸かし器と一緒にするな。あーしは、家族をバカにされたからキレているだけ。つまり、正当で普通!」
「……いや、あの……グレイの悪口を言われる前から、キレていたような……」
「言いがかりつけてくんな! あーしは、基本、温和で柔和なんだよ!」




