96話 主役級のバケモノが多すぎて、主役の影が限界まで薄くなる。
96話 主役級のバケモノが多すぎて、主役の影が限界まで薄くなる。
「狂信者相手に常識など通じん! ゆるぎない信念を持つ者は、他人の言葉に耳を傾けたりはしない!」
「……まあ、お前もそうだしな……神どうこうは別としても、ゆるぎない信念を持つと言う点においては確実に……」
――と、そこで、
それまで完全に空気だったセンさんが、
カンツに、
「ところで、カンツさんよぉ……なんでここにいんの? 向こうのグラウンドで試合してたんじゃないの?」
「こちらの男子チームが、女子チームにボコられていると聞いて、居ても立っても居られなくなった! 女子が活躍するのは別にかまわんが、男子が過剰に侮られるのは、流石に許せん! ここからは、ワシが、要として、このチームをけん引する! 文句がある者はワシの前で、その意を示せ! 拳で、語り合おう! がはははは!」
「……いや、誰も文句はねぇよ。お前が、こっちについてくれれば、この点差でも普通に勝機が出てくる。というか、『カンツが主軸になる』という条件以外で、この状況がひっくりかえることはないだろうな」
ボソっとそう言ったセン。
その隣にいる紙野が、
「いや、カンツが主軸になる以外でも、もう一つだけ、この逆境をどうにかする方法はあるぞ」
「聞こうじゃないか、紙野さん。そのもう一つの手段とは?」
「センエースが真に覚醒すること。そうすれば、女子チーム全員を犯して殺すことぐらいワケはない」
「……どこからどう訂正していけばいいのか、処理が追い付かないレベルの物量だな。よくもまあ、その短いセリフの中に、それだけイカれたことを詰め込めるもんだ。たいしたもんだよ。紙野、お前がナンバーワンだ」
モブ二人が、どうでもいい会話をしているが、
そんなことは、本当にどうでもいいと言わんばかりに試合は加速していく。
比較的、外野陣の中では活躍が微妙だった鈴木ホウマがカンツと交代。
現状のオーダーは、以下の通り。
ピッチャー カンツ・ソーヨーシ。
キャッチャー クマートゥ。
ファースト ビアラ・モスト・D・アークホーン。
セカンド グレイ・アルトマ・O・ノッカイ。
ショート ミケランジェイル・スカー。
サード カキマロ。
ライト 田中シャインピース。
センター ダイナマイト・ダリィ。
レフト 佐藤ツカム。
カンツという圧倒的主砲。
『絶対的精神的支柱』が加わったことで、
『センチーム(センはベンチ)』は勢いづいた。
特待生だけを敬遠する方式は、もはや使えない。
かなり戦力的に強化が加わったセンチームは怒涛の勢いで塁をうめていく。
田中と佐藤の二人が、ちゃんと足手まといをしているが、
しかし、他の面々は、エバの剛球に、がっつりと食らいついている。
そして、どうにか、満塁にした状態で、カンツに打順をまわした。
特待生の中に『負けず嫌いじゃない者』は存在しない。
あの陰キャ代表であるビアラさんも、負けるのは好きじゃない。
全員が、この点差をガチでひっくり返そうと必死にあがいた結果。
「がはははは! とりあえず、満塁ホームランで点差を埋めさせてもらうぞ!」
と、『自分がホームランを打つのは確定事項』と言い切るカンツ。




