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5話 ラムドとリーン。

5話 ラムドとリーン。



「さきほど、こいつらを召喚した際に失った存在値を取り戻そうと、さらに無茶な召喚にチャレンジいたしましてね。え? その無茶な召喚の内容を詳しく説明しろ? 仕方がないですなぁ。では、八時間ほどかけて序章のさわりを――」


「やめろ、やめろ! お前の召喚講義を聞く気などない! というか、八時間もかけて序章のさわりだけ?! 何百時間喋る気だ!」


「それでは、簡潔に説明しましょうか。まず、この三体を召喚する事が、いかに無茶だったかという事くらいはご理解いただけていますね?」


「バカにするな。流石にそのくらいは分かる」


 ムゥと軽くほっぺを膨らませるリーン。

 いつだって、ラムド・セノワールに対しては過剰な反応をしてしまう。

 他の臣下の前では、常に王たらんとしているリーンだが、いつだって、ラムドに対してだけは、だらしない父親に対する娘のようになってしまう。


 深い敬意と親愛と、そして、溢れんばかりの劣等感。

 どこかで甘えているし、どこかで羨んでいる。


 いつも、自分よりも遥かに優秀な存在が側にいるという安心感に救われて、

 同時に、自分一人だけでは何もできないという事実に情けなさを覚えて、



「まったく、無茶をしすぎだ、ばかものめ。……ラムド、お前は、自分がこの国にとってどれほど重要な存在かを、ほんの少しだけでもいいから、ちゃんと考えて生きてくれ」


「まあ、それはともかく――」


「棚におくな!」


 本当にイライラする。

 理解してくれないこと、わかりあえないこと。


 ――魔王国において、最も価値のある要人は誰か。

 最低限の教養を持つ者にソレを聞けば、100人中100人が、『魔王国で最も重要な存在はラムド・セノワールである』と答えるだろう。


 しかし、当人は、『国のことなどどうでもいい』と思っている。

 リーンは、そのことが悔しくて仕方がない。


 だから、いつも、ラムドと対面すると、恥も外聞もなく『がぉお』と吠えてしまう。


「まったく、まったく!」


 ぷんぷんしているリーンに、ゴートは、たんたんと、


「だいぶ疲弊した体と存在値、このままではダメだ。そう思った俺は、禁術に手をだしました」


 そこで、サリエリが、


「禁術?」


 首をかしげたのを受けて、ゴートは嬉々とした顔をしてみせて、


「お? 聞くか? 詳しく聞くか? 仕方がない。では、まず、五次元規則配列多孔構造のミルドラレータにおける準静的な平衡処理による可逆性の――」


「するな! 黙れ! 脳が腐る!」


 イライラMAXのリーンは、ドスンと重ための酷い事を言ってから、サリエリをキっと睨み、八つ当たり的に、


「サリエリ、余計な口出しはするな!」


「もうしわけありませんでした、陛下」


 サリエリは、一度、深く頭を下げてから、ラムドに視線を送り、


「ラムド、もう余計な口ははさまないから、止まらずに先へ先へと、テンポよく話を進めてくれ。簡潔に……手短にな」


「それじゃあ、粛々と」


 コホンと息をついて、


「禁術によって、特異な異界と接続した際、俺の魂魄は半分ほど爆散しました。どうにか、記憶とコアオーラを留める事には成功しましたが、それ以外は失ってしまいました」


「記憶とコア以外を失った……だと……?」


 ラムドの話を聞いて、リーンの顔が青くなった。

 リーンにとって、ラムドを失う事は、己が半身を失うよりも遥かに大きな痛手。


「その通りです。義理を欠きたくはありませんので、正直に申し上げましょう」


 ゴートは、まっすぐに、リーンの目を見て、


「俺は、完全なラムドではありません」


「……っ」


 声を飲んで目を見開いたリーンに、ゴートは間髪いれず、


「ただし! 本質は同じです。記憶もコアオーラも同じ。出来る事も同じで、思想も特に変化はなし。大事な事なので、二回言いますよ? 本質は、同じなのです」


 念押ししてから、


「何を持って、俺を俺とするのか、その答えを、俺は持ち合わせていないため、この場における俺は、陛下に、『俺は間違いなくラムドである』と断定する事はできません。……というわけで、一度、ここらで、質問を受け付けることといたします。存在証明に対話は不可欠。質疑応答によって、俺は『俺が俺であること』を陛下に証明いたしましょうぞ」






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