60話 カンツについていこう。鉄人マラソン大会。
60話 カンツについていこう。鉄人マラソン大会。
「――『世界の主人公』の向こう側に辿り着いた、この紙野さんが選ばれなかったことが間違い。いや、主役は遅れて現れるもの――という法則をあてはめた場合、むしろ、この状況は必然だったのかもしれない。そうだろう?」
「そうだな。紙野さんの言う通りだ。反論する余地がない。反論の余地がないので、会話が終わっても仕方がないな」
などと、軽く流しながら、
センは、ザっと資料に目を通していく。
(……選抜大会……神話生物研究会のメンバーと、様々な分野で勝負をしていく、レクリエーション企画……基本的には、神研のメンバーの凄さを思い知らされるだけ……ごくたまに、マジで、編入できる権利を得る者もあらわれるが、そんなものは、稀も稀……)
この選抜大会に夢を見ている学生も一定割合存在し、部活動の中には『神話生物研究会編入選抜大会、対策委員会』などという、だいぶ尖ったクラブもある始末。
(神研のやつらは、全員が、カンツに匹敵するバケモン……そんなやつらと、まともに勝負して勝てるわけがねぇ……それに、神話生物研究会に入りたいとも思わねぇ……参加する意味はゼロだから、『辞退したい』ってのが本音なんだが……なんでか、このレクリエーションは、強制参加なんだよなぁ……)
『選抜大会に本気で挑むこと』は、この学園における義務のようになっており、
もし、不参加を決め込んだり、手を抜いたりした場合、
普通に単位を落として留年する、という、とんでもない仕様。
『なんで、そんな暴挙が許されているのか』
という、当然の抗議が行われたことも何度かあるが、
しかし、その全てが、毎度、もれなく、握りつぶされてきた。
この学園における神話生物研究会に対する熱量は、どの角度から見ても異常。
(……今回の一回戦は……『カンツについていこう。鉄人マラソン大会』……バカか?)
プログラムの第一種目を目にしたセンは、
つい、鼻で笑ってしまった。
(……この世の誰が、カンツについていけんだよ。あいつ、毎朝、爆笑しながら、世界記録級の爆速で100キロマラソンするのがルーティンになっている変態だぞ……もう、しょっぱなから、企画が終わってんな……)
こんなふざけた企画でも、一応は参加しないといけない、という、この学校のふざけた前提に怒りを覚えるセン。
後ろの席の紙野も、
第一種目に対して、
「……ええ……マジぃ……」
と、しんどそうな顔をしていた。
彼の反応に対して興味を持ったセンは、軽く、紙野に視線を送り、
「超えられない壁の向こうにいる紙野さん。どうすか? カンツについていけそうっすか?」
「あ、当たり前だろう……どうせ、本気を出してはこないだろうし。勝つとか追い越すとかなら、ちょっと厳しいけど、ようは、ついていけばいいんだろう? じゃあ、あとは根性勝負だ。神のごときメンタルを持つ俺には余裕、と言わざるをえない。この紙野ボーレさんに不可能はない。そうだろう?」
「すごいっすねー、紙野さんの言うとおりだ。反論の余地がない」
と、冷めた目で、そんなことを言うセン。
今、
「センエース神話への道~黒歴史だらけの制作秘話~」
というのを描いております。
近々投稿するので、
興味ある人だけ、ヒマな時に読んでみてくださいw




