26話 世界の半分以上をお前にやろう。
26話 世界の半分以上をお前にやろう。
「陛下の言葉は、その全てが輝いておられる。陛下に一つだけ文句を言わせていただけるのであれば、なぜ、もっと、はやく、その尊さを、我々に魅せつけてくれなかったのかという、その一点のみ。おなじ過ちを二度と繰り返さぬよう。ワシと同じ痛みを背負う後進が産まれぬように、やはり、陛下の尊さを、世界中に広める必要がありまするなぁ」
「……うそぉーん」
言葉巧みに、どうにか、センエース布教をやめさせようと頭をひねったカドヒトさん。
必死に考えての行動は、確かに、効果抜群だったのだが、
しかし、真意とは逆の方向で、『こうかはばつぐんだ』が働いてしまった。
G線上のファントムトークでは、鼻で笑われて終わりなので、
ガチギレバージョンのファントムトークという邪道な必殺技を使ったカドヒト。
割とガチで思っている本音を駆使して、世界をケムにまく豪快な舌技。
『永い時間を歩んできたからこそ可能な妙技』で、どうにか、カンツの暴走を止めようと奮闘したカドヒトだったが、しかし、結果は無情。
「いや、だからね、カンツさん……そうじゃないんだよ。何がどうとは言えんけど……いや、言えるんだけれど、とにもかくにも違うんだよ」
あまりにも、想定外な流れを前にして、
普通に『しどろもどろ』になるカドヒト。
カドヒトの予定では、ここで、カンツが己の過ちに気づき、『ワシが間違っていた。やはり、センエースなんてただのクソザコナメクジだ』と、カドヒト視点における『事実』に届き、センエース布教をやめるものだとばかり思っていた。
……なんという短絡的思考!
しかし、割とガチで、そうなるだろうと予想していた、未来予想図の描き方があまりにも斬新というか、普通に下手すぎる男!
もちろん、カドヒトさんも、『ガチのおバカさん』ではないので、
100%自分の思い描いた通りになるとは思ってはいなかったが、
しかし、流石に、これだけ言えば、多少は分かってくれるだろう、
――ぐらいには、本気で、マジで、ふつうに思っていたのである。
ところがどっこい!
現実は、なかなか、思った通りにいかないもの!
想像していた以上のことも起こりえるし、想像していた以下のこともおこりえる。
それが人生!
気難しい観念の集積所!!
「カンツ……もう、あれだ……その……ちょっと、マジで……勘弁してくれたら、嬉しいなぁ、ってのが、もう、ただの本音だ」
しどろもどろに、まるで、駄々をこねる子供のように、
「そうだ、カンツ。これをやろう」
そう言いながら、カドヒトは、アイテムボックスから、
自分が作成した究極超神器のいくつかを取り出して、
「ほーら、すごいだろう。これらを装備すれば、お前の存在値は爆上がり確定。三至の上に立つことも可能だろう。どうだ、カンツ。ゼノリカの王にならないか? 世界の半分と言わず、全てをお前にやろう。この究極超神器だけではなく、俺がもっているものを、全部やる。なんだったら、もう『神界の深層を統べる暴君』という地位もやろうじゃないか。暴君はいいぞぉ。特になんのメリットもないけど、とにかく、いいぞぉ。だから、センエースの布教みたいな仕事は、やめていただく方向で、ここは一つ、どうにか手を打っていただく方向で、なんとかなりませんかねぇ……」
と、最終手段であるところの『ピカピカの贈賄罪』をかまそうとする悪代官カドヒト。




