20話 哀しい人間。
20話 哀しい人間。
『ワシも、朝昼晩、それぞれ1万回、感謝の閃拳突きをはじめましてねぇ。ワシの閃拳は、主の足元にも及びませんが、愚民の目を覚まさせることぐらいは出来ると信じておりまする!』
と、真っ向からマシンガン反論。
バッキバキの目でやべぇことを叫び続ける修羅。
暴走機関車モードになったカンツに話は通じない。
カンツが『ガチの敵』なら、やかましいだけのマシンガントークなど、秒でブッタ切って、強引な武で切り返すのだが、しかし、カンツは家族!
センは、『悪意ある敵』に対しては自由になれるが、『自分のために頑張って働いている家族』が相手だと、いつだって、おそろしく不自由!
相手が『酒やギャンブルに溺れているクソおやじ』のポジションであれば、ボコボコにしてでも止めるのだが、
今回の場合は『必死に、祖父の偉大さを伝えようと頑張りすぎている、かわいい孫』のポジションなので、『ボコボコにして止める』という手段を取れない。
神の王にまで届いたセンだが、
しかし、所詮は、ただの人間。
――哀しい人間……
必死に止めようとはするものの、
しかし、暴走が止まらないゼノリカに対し、
センは、ついに、例の秘密機関を投入することを決定。
その秘密機関の名前は『反聖典組織リフレクション』。
センエースの偽名の一つ『カドヒト・イッツガイ』が代表を務める、第二~第九アルファの中でも、最高峰に頭がおかしい複合的カンパニー。
聖典の教えを世界に解くことを目的としている、世界最大の宗教『聖典教』に、真っ向から立ち向かい続けた反骨精神の塊。
そんなリフレクションの代表であるカドヒト・イッツガイは、生きる伝説、反社の王、パラノイアエンペラーと呼ばれ、違う意味で恐れられている。
センは、『カドヒトへの擬態』をバッチリ決め込むと、
リフレクションのメンバーを総動員させて、
今回の『ゼノリカの動きに懐疑的な一般民衆の心』を動かしながら、
ゼノリカの暴走に対して立ち向かった。
ヒーローを徹底してきたことによって磨かれたカリスマ、
なんだかんだ王として頑張ってきた経歴、
その全ての経験値をフルで投入し、
セン――カドヒトは、『センエース布教対策委員会』を発足。
こうして、ゼノリカとリフレクションの全面戦争が幕を開けた。
★
『センエース布教対策委員会』本部における対策会議において、
リフレクションのメンバーの一人である『イーウ』が、
「リーダー……メンバー全員の弛まぬ努力の結果、ようやく、センエース布教の代表であるカンツ猊下を話し合いの場に引っ張り出すことに成功しました!」
その発言を受けて、
ゲンドウポーズで会議を俯瞰しているカドヒトが、
「よくやった。お前たち全員の奮闘に、心から感謝する」
センエースとしての対話では、カンツに対して、あまり強く出られなかった。
しかし、『カドヒト・イッツガイ』としてなら、違うアプローチをためせる。
「カンツ猊下は、リーダーとの一対一での対話を望まれております。どうしますか?」
「受けよう。俺は逃げない。『どこにでもいるただのアホでしかないセンエースを過剰に美化して布教し、その美化された虚像を信じないと罰則』などという反社極まりない暴挙……見過ごすわけにはいかん。この俺が、必ず止めてみせる。吉報を待て」




