18話 こうなったら、ゼノリカを皆殺しにするしかないか……
18話 こうなったら、ゼノリカを皆殺しにするしかないか……
「産まれてきてくださったことに感謝を……存在してくれていることに感謝を……センエース神帝陛下……あなた様こそが、真なる最果て。この上なく尊き命の支配者」
カンツの言葉を聞いたセンは、天を仰いで、
「……ダメだ……終わった……」
青い顔で、そうつぶやくことしか出来なかった。
実家の自室を見ていながら、しかし、それでも、『崇拝する』と覚悟を決めた狂信者……それが、ゼノリカの中でも『常識人の枠』に入るカンツであるという現実に直面し、センの心はヘシ折れた。
『戦場で敵を前にした時』は、なかなか折れない鋼のハートだが、しかし、こういう場面では、けっこう、簡単にポキポキいってしまう限定条件付き豆腐メンタル。
センは、心の中で、
(俺の存在を強制的に布教させようという暴挙……これは、もはや、やめさせようとしても無駄だ……カンツのやつ、目がイっちゃってる……暴走機関車のカンツさんが、ここまでイカれてしまっていると言う段階で、もはや、言葉での制御は不可能……こうなったら、速攻の解決策は、ゼノリカの面々を皆殺しにするぐらい……)
それが出来れば苦労はない。
実行するだけなら楽勝。
センに勝てる命など存在しないのだから。
しかし、無駄に責任感が強い病的な高潔のセンさんに、そんなマネができるはずもなし。
(冗談はともかくとして……流石に、この状況はしんどすぎる……どうにかしないといけない。……うーむ……こうなったら……『世界を循環させる完全エネルギー』と並行して、探すしかない……『ゼノリカから、俺に関する記憶を、完全に奪い去る手法』……)
新たな決意を固めていく。
(俺は必ず脱却するぞ……この『過剰に崇拝されている』という、『いやがらせ』の最果てにある状況から! 必ず!)
★
なんとか、ギリギリまで、センは、あがき、もがき、苦しみ、
『強引にセンエースを布教しようとするゼノリカのうねり』に逆らおうとした。
『やめようよ、そんな、頭おかしいこと。ゴミをダイヤモンドだって言って回るとか、マジのやばい連中だって……『相手をだます気があって』とかなら、まだ理解できる行動だけど、『本気でゴミをダイヤモンドだと信じて、吹聴しまくる』って……もう、ラリってるって……マジで……ほんと、やめよ? ねぇ……ちょっと……聞いてる? もしもーし。あんたらが言うところの命の王が、嘆願してますよー、ねぇ、ほんと……ねぇって!』
と、必死に、世のコトワリと道徳と倫理を説くセンだったが、しかし、配下の面々の耳には右から左。
必死に頑張ったセンの制止を振り切り、
ゼノリカは、第二~第九アルファの一般民衆に対して、
『センエースの大布教』を開始した。
「お、終わった……何もかも……」
これまで、あまたの絶望を前にして、
堂々と、勇気を叫んできた稀代のヒーロー、センエース。
しかし、身内が巻きおこした、前代未聞の大不祥事を前に、
膝から崩れ落ちることしかできなかった。
「もうダメだ……おしまいだ……」
テンプレが飛び出してはいるものの、
それは、余裕からくるものではなく、
全身全霊の失望と無念からくる慟哭




