7話 ほかの何よりも大事な会議。
7話 ほかの何よりも大事な会議。
仮に上司がいなくとも、数日や数か月程度なら、配下の面々だけでも、どうとでもなる。
沙良想衆と愚連がいれば、世界は余裕で回る。
なんせ、沙良想衆と愚連は、『優秀なトップ世界(第二アルファ~第九アルファ)』の中でも最高峰の才能を持つ者たちの集まりだから。
『法的に、他人の足を引っ張ることは正式に禁止』という、『余計な心配』をする必要がない超好環境で、血反吐を吐き散らしながら、切磋琢磨してきた天才集団。
彼・彼女らの優秀さはエゲつない。
そんな彼・彼女らが暴走しないための監視機関である百済も正常に機能している。
普通、優秀な人間が一か所に集まれば、妬みや嫉みなどの、歪んだ感情に支配される者が出てきて、内部の各所が淀んで腐っていくものだが、しかし、ゼノリカでは、それを完全に禁止しており、その絶対的タブーを破ったものは、容赦なく殺される。
これまでの歴史の中で、『嫉妬心や野心から、他者の足を引っ張った者』は、当然ながら、何人かいるわけだが、そういう愚者たちは、例外なく極刑に処されてきた。
『こいつは優秀だから大目にみる』などという配慮は下されない。
『こいつは神族の血縁だから目をつぶる』などという忖度もありえない。
中には、『九華の十席級にまで登れる才能を持った者』もいたが、『ライン越えの穢れ』を見せた瞬間、容赦なく斬首された。
『上に上がりたければ、自分を磨け』というモットーを徹底してきた先進的潔癖組織。
その絶対的前提を守り続けた結果、ゼノリカは、プライマルメモリの全てを見渡してみても、類をみない、完璧なる最高位の『族』となったのである。
――ゼノリカは天下だけに焦点をあてても、ほぼ完璧な集団。
ゆえに、ゼノリカの上層部は、
『ちょっとした不備を整えたあと』は、
以降の諸々を、下部組織の配下たちに任せて、
自分たちは、最も重大な会議を始めることにした。
今後の第二~第九アルファにとって、
何よりも大事な会議。
――それは、
「この上なく尊き神よ……我ら全ての信仰を、余すことなく、主に捧げまする……リラ・リラ・ゼノリカ……」
今回の議長であるカンツ・ソーヨーシが、
壇上で、天に向かって、『祈りの言葉』を発すると、
それに続いて、この場にいる全ての神族(数百名)が、
片膝をついた最敬礼の状態で、
「「「リラ・リラ・ゼノリカ」」」
と、心からの祈りをささげる。
『当の神』は『祈りを捧げられたいなんて、一ミリも思っていない』し、もっと言えば『マジでやめてほしい』と思っている――が、そんなこと、狂信者たちは『知ったことではない』のスタンスで、自分達の信仰を、全力で、ブンブンと振り回していく。
神の高潔さ・謙虚さに、いちいち付き合っていたら、祈りのひとつも捧げられない――という、その『深い部分の理解』にも届いている神族たちは、まるで『カワイイ一人息子のために命を奉げると誓った過保護な母親』のように、『神(息子)』がどう思っているかなど完全シカトの構えで、『自分たちが神にとって必要だと思う事』だけを、率先して行うヤバい修羅と化している。




