23話 俺が俺である証。
23話 俺が俺である証。
「どこなら、俺そのものになるのかな? 脳? 心臓? それらを切り取って、ホルマリン漬けとかしたら、その標本が俺になるのかな?」
「……難しい問題じゃな」
「結論を言おう。俺が俺であるための証は、『外殻』には存在しない。いや、まあ、マテリアルにも、フラグメントがまったくないってことはないんだけど……でも、それは、フラグメントに照らされて顕現した特徴の一つでしかない」
「本当に大事な『中核としてのフラグメント(かけら)』は、『イデアクロニクル(観念の記録)』と『アストラルスピリット(心星幽玄魂魄)』の中にある。この辺、詳細を説明しようとすると、また、エグいほど話が複雑化するから、今は省くけど……とりあえず、『そいつがそいつであることの証』というものは、一応、明確に存在していて、センエースにとって大事な『フラグメント(証の一部)』は、ちゃんと回収して、再構築したって話」
「ふむ。それなら、なぜ、センエースは、散り際に、『こんなエンディングは認めない』などと言っておったのじゃ? 状況が理解できんかったからか?」
「違う。あいつは賢くないけどバカじゃない。全部わかった上で、あいつは、現状を認めないと宣言した」
「なぜ?」
「他人に用意されたレールはお気に召さないんじゃない? あと、一部じゃなくて『全部』を取り戻したいから……かな。あいつは、ワガママなんだ。『完全』なハッピーエンドを求めている」
カミノが『再構築』した『新世界1』は、あくまでも土台。
ヌルから全てを奪い返さないと、完全な世界にはならない。
だが、一応、土台なので、完全でなくとも、下地ではある。
今の新世界1は、絵が塗られていないラフ絵みたいなもの。
『色を入れて完成した時の印象』とは確かに違いがあるが、
しかし、ラフ絵にはラフ絵の勢いというものが確かにある。
けっしてニセモノではない、むしろ本物以上のパッション。
欠けてしまったフラグメントは、今後、埋めていけばいい。
クロニクルが欠けただけで不完全だと断ずるはナンセンス。
スピリットなんてものは、むしろ『不完全』でこそ美しい。
つまりは、結局、最終的に、どっちが好みかという印象論。
「どっちでもいい印象論に執着できるだけの力が、今のセンエースにはない……で、じゃあ、どうなるかっていうと、『俺』が『ウザい鍛錬に付き合わされるハメになる』ってこと。すでに、1000億年も、むりやり、付き合わされている」
「地獄じゃな」
「だから、俺は、強制的な『半ハッピーエンド』をくれてあげたってわけ。別に、全部を取り戻せなくても、フラグメントはちゃんとあるんだから、『そいつ』は『そいつ』たりうる。フラグメントを有していながら、まだ足りないなんて、そんなワガママ……いや、別に、こだわりを持つのは別にいいんだ。いいんだけど、そんな、『どうでもいいこだわり』に、他人を巻き込むなよって話。クロ○ワがすごい映画監督なのは分かるけど、だからって、『画面に映らないタンスの中身』にまでこだわるのは、周りのスタッフからすれば、えげつない迷惑でしかないって話。こだわりを持ちたいなら、一人でやってくれって話だ。それなら誰も文句は言わないから」
最低限とっていた休憩時間を、さらに30分ほど削りました。
もう、私の自由時間など存在しない!
全てはセンエース作成のために……




