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63話 ソル

 63話 ソル



『何者かは言えません、って……いや、そこが、そこだけが大事だろ。ぶっちゃけ、名前も理由もどうでもいい。その二つはいくらでもウソをこけるからなぁ。疑うなら実際にやってみせようか? 俺の名前は山田で、目的は歯医者さんになることだ』


 言葉で信用は得られない。

 だが、『通信魔法を用いている』この状態では言葉しかかわせない。

 それでも信じてもらいたいなら、せめて、全力で身分くらいは明かしてもらわないと話にならない。


『どうだ、前提がミスっていると理解できたか? まず、お前が何者なのか、信頼に値するヤツなのか、詐欺師なのかそうじゃないのか、そこが分かっていないのに建設的な対話なんかできるか。というわけで、これより、脳をシャットダウンし、通信切断の手段を探す、交信終わり』


 当たり前だが、今のゴートの心理状態は、事前の恐怖体験に強く影響されているわけで、警戒心が普段よりもだいぶ強くなっていた。



『残念ですが、そちらから私の通信を切る手段はありません』



『とんだ通信テロだな。ますます怪しい。というわけで、今度こそ、永遠にさようなら。たとえ、通信が切れなくとも、俺が反応しなければ先には進めないだろ。今後は、一人で勝手に喋ってろ。もう二度と返事はしない』


『私が何者なのか説明できない事、心からお詫び申し上げます。ただ、これだけはご理解いただきたいのですが……ゴート様とUV1様の魂をパラソルモンの地下迷宮から回収し、蘇らせたのは私です』


「っ……」


 そんな事を言われては、流石にシカトこくわけにはいかず、


『お前が……ていうか、UV1も殺されていたのか……いや、まあ、当たり前か……』


 ゴートは、意識を切り替えて、


(魂の回収……器さえあればそれも不可能じゃないってのは、ラムドの召喚で実体験しているが……)


 心の中でそうつぶやいてから、ソルに意識を向けて、


『何が、俺たちの器になった? 蘇生というのは、どの程度の蘇生だ? 霊体か? 期間限定か? 俺はゾンビなのか?』


 聞きたいことが溢れてくる。

 返答を待つよりも先に、不安が口をついで出る。


『蘇生したのは脳か? 心か? コアか? こういう【哲学的な問い】は、どうしても不必要に長くなるだけだから出来れば避けたいが、しかし、どうしても聞いておきたい。今の俺は……俺なのか? というか、何が残っていれば俺になる?』


 それは、『センエース』から『ゴート・ラムド・セノワール』になった時も抱いた疑問。

 あの時は問いかける相手はいなかった。

 今は違う。

 だから溢れる。


『もし、その辺の疑問にも答えてくれるというのなら、腹を割って、信頼をむき出しにして、あんたと会話しようって気になるんだが? どうだ?』


『哲学の解答は持ち合わせていません。ただ、蘇生については答えられます。まず、神のスキルに、【反魂の神聖式】という術があります。その術で2つの事象が可能となります。【器のコピー作成】と【そのコピーとコアオーラの融合】です。使用する時期(死後から時間がたつと難易度は上がる)や、術者の技術で結果は大きく異なりますが、上位の術者が完全に成功させれば、完全蘇生も可能です。おそろしく難易度が高い技術であり、失敗する可能性の方が遥かに高い超位スキル。ただし、成功すれば、そこらの安い反魂術とは違い、完全な蘇生が可能となる夢の力』


 死者蘇生の方法はいくつかある。

 だが、現世で行われるソレらは、どれも成功率が非常に低い。

 大概はただの失敗で終わり、最悪、対象者は『ゾンビや半霊(ようするに知性なきモンスターになるという事。ただ、実は、そこから進化して魔人になる可能性もあったりする)』になる。

 神の領域でも、そうとう高みに至らないと、蘇生の『完全成功確率』は低く、究極超神の領域に至っても、蘇生の術を使う時は『失敗してないよな? 大丈夫だよな? ミスってないよな?』とガッツリ不安になる。

 ちなみに、ここでいう完全蘇生は、『なにをもってして、私は私たりうるのか』という哲学的な問いに対する疑似解答的な完全な蘇生であり、『違う器』を用意し、半壊した魂魄をツギハギして押しこめるだけの蘇生(単純な魂魄のリサイクル)なら、現世の僧侶でも、そこそこの確率(1%~5%)で成功可能。


『つまり、あんたは神の上位者でないと出来ない術が使える超越者ってことか?』


『申し訳ありません。私自身についての説明はできません。説明をしないのではなく、出来ない。私があなた様にお伝えできるのは、ここまでが限界です』



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