33話 世界を回すための必要悪という甘え。
33話 世界を回すための必要悪という甘え。
何を言っているのかさっぱり分からないという顔をしているスルスに、
クリミアは、とうとうと、
「国がどうこうなどという、そんな小さな枠には収まらない。私は、『世界のために、自由に悪意をまき散らしてもかまわない』という許しを、世界から、正式に与えられている」
「……」
「魂魄のエネルギーを循環させるためには、憎悪が必要なんだ。憎悪は強いエネルギーになる。希望や愛なんかも、エネルギーとしては使えるらしいが、パワーが足りない。太陽光発電よりも、原子力発電の方が上――みたいなものなのだが、この深い例題は、コスモゾーンに触れていないお前には理解できない概念だろうな。……とにもかくにも、怒りにまみれた思念体は世界を回す大きな原動力の一つになる。……つまり、私が貴様をイジメているのは、世界のためなんだよ。くくく」
楽しくてたまらないという、残虐性全開の笑みで、
「世界は私に、『私がとことん自由であること』を強く求めている。……貴様が、私になぶられているのは、世界のためであり、貴様自身が、私によってグチャグチャにされるのも、貴様の家族がズタズタにされるのも、すべては、世界が望んでいること。私は、この世界のために尽力しているだけなのだよ……くく……くくくっ!」
クリミアは、前世でも、今のように、上位者の地位につき、平民をいたぶって遊んでいた。
『究極超神センエース』という名の『やべぇ化け物』に狩られてしまったため、とことん地獄を味わってから死ぬことになったが、しかし、上質な悪意を持つ彼は、世界循環のため、また利用されることとなった。
彼の魂魄は、ただ使いまわされただけではなかった。
センエースという究極の絶望に触れた経験を経たことで、『世界の真理の一部を知ることが出来る』という、極めて特異なスペシャルを有することに成功した。
クリミアは壊れている。
世界のために頑張る気はないが、
しかし、自分の行っている残虐行為が、
『世界に認められている』ということを知って、
心の底から嬉しくなった。
前世では、頭の片隅の一部で、『こんなことをしていたら、自分は地獄に堕ちるのではないだろうか』という、死後の恐怖が、『かすか』にあった。
だから、どこかで、手を緩めてしまっていた――という部分がなくもなかった。
絶対に酒を飲みすぎてしまうアル中のように『歯止めがきかなくなること』も多々あったが、頭のどこかでは、『やりすぎたら、まずいかも』というリミッターがわずかにあったのは事実。
だが、今のクリミアに、そのリミッターは存在しない。
だって、世界に許されているのだから。
自分が、命をオモチャにしているのは、
世界がそれを望んでいるから。
だから、地獄に堕ちることを心配する必要など皆無。
だって、自分は、世界のために仕事をしているだけなのだから。
この嗜虐心を満たすための行動は、すべて、世界を回すための労働。
むしろ、もっと、もっと、もっと、やった方がいいのだ――と、クリミアは、自分の心を解放して、自由に、爽快に、なんの心配もなく、命をもてあそぶ。
「想像しろ、スルス。お前の娘は、これから、身も心もズタズタに引き裂かれる。まずは、私がとことん遊ぶ。飽きたら、ホアノスに売る。ホアノスには殺さないように頼んでおく。飽きたら、必ず、違うクズに売るように言っておく。その次のクズも、その次のクズも、飽きるまで、とことん、なぶってから、また、次のクズに売りさばく。そうやって、とことん壊していく。女が、どこまで壊れるのか、それを貴様の娘で実験する。想像しろ、スルス。そして、絶望するがいい。それがエネルギーとなって世界を回すんだ。どうだ? 素晴らしいだろう? お前が苦しめば苦しむほど、世界は美しい円を描く。はは、はははははは、ははははははははははっ!」




