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39話 フッキ・ゴーレム

 39話 フッキ・ゴーレム



『……ヌウ』



 それは、淡い緑の光を放っている全長5メートルほどのゴーレムだった。

 フォルムは非常に簡素。

 まるで、手抜きの食玩。


 そのゴーレムは、現世に出現すると、



『グク……く……ぷふぅ……最適化完了……』



 それだけ呟いて口を閉じた。

 周囲に気を配ることもなく、脚部を曲げて地面に腰を下ろす。


 頭部に搭載されているモノアイが、一瞬、ゴートとUV1をとらえた――が、フッキ・ゴーレムは、まったく意に介さず、そのまま、ズズンとあぐらをかいて、ソっとうつむいた。


 フッキ・ゴーレムの、ゴートとUV1に対する警戒心の無さは、

 『仕事から帰ってきた直後のサラリーマン』が、『ふぅ』と一息つきながらソファーに腰を落としたと同時に発見した『壁にはりついている小さなクモ』に対するソレに近かった。


 ゴートもUV1もどうでもいい、と態度でハッキリと示しながら、

 その鉄人形は、そして、ピクリとも動かなくなった。






 ――モノ言わぬ置物となったゴーレムの威容をジっと見つめるゴート。


 恐怖心などはなかった。

 もはや、ゴートの強さは次元が違う。

 相手がだれであろうと、なんであろうと、今の力があれば、どうとでもなる。


 ただ、だからって、未知に対する警戒心等が完全に消える訳ではない。


 それに、先ほど響いた声も気になる。


(大部分にノイズが入っていて、ほとんど分からなかったが……『12000の生贄がどうこう』とか『条件が満たされた云々』ってのは聞き取れた……もし、俺が殺した12000体の高位モンスター……あれらの魂魄を生贄に捧げる事が、あのゴーレムを召喚するための条件だったとしたら……そんな狂ったような条件じゃないと召喚できないあのゴーレムの力っていったい……)


 ゴートは、注意してフッキ・ゴーレムを観察する。


 フッキ・ゴーレムが発する雰囲気は、どこか異質だった。

 内包しているオーラが、妙に静かで、とらえどころがない。



(……プロパティアイを使っても……存在値が見えない……)



 EXレベルが500万を超えたことで、ラムドのサードアイはプロパティアイに進化していた。

 プロパティアイは、神をも見通す最強の目。


 しかし、目の前のゴーレムは、なぜだか見通せない。



(俺の目でも見えないってことは、やはり、相当な化け物ってこと……フェイクオーラの性能が高いのか、そういう特性持ちの特殊種族なのか、何かしらのアリア・ギアスか……)


 『今の自分の目をごまかすなどありえない』とゴートは思うが、しかし、ありえない事など、ここ数時間で山のように起こり続けている。

 存在値が見えないモンスターが出現するくらい、もはや、ありえない話ではない。


(……何にせよ、今までのザコ共とは違い、このゴーレムは、ある程度の領域には立っているってことだ。……流石に今の俺より強くはないだろうが、見えない以上、『多少は相手になる』という可能性もなくはない……)


 ゴートは思う。

 ――おそらく、このゴーレムは、レベル10万~50万級のモンスター。

 ――もしかしたら100万~200万の領域に達しているかもしれない。


 12000体の高位モンスターを生贄に捧げることで召喚されたゴーレム。

 ならば、存在値が10万や100万を超えている可能性もゼロではない。


 もちろん、現状では、あくまでも、そういう可能性もゼロではないというだけ。


 だから、『もしかしたら、かなりの強さを持っているかもしれない』とまでは思っても、『自分より強いかもしれない』という思考には至らなかった。

 『今の自分より強い者などいるはずない』という、単純な楽観視。

 ようするには、ただの希望的観測。


 結果、ゴートは、


(もし、あのゴーレムが存在値数百万クラスの力を持っているとしたら、ぶっ殺した時、相当な経験値になる……つまり、俺はまたさらに強くなる……)


 未来を妄想し、


「は、ははは……もう、こうなったら、とことんまで行ってやるか。強くなり続ける自分に恐怖を覚える暇もないくらい、果てしなく、強く……1億でも……1兆でも……どこまでも……そう、どこまでも!」




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