21話 ここまできたら、素のタイマンで決着をつけようやないかい、あほんだらぁ!
21話 ここまできたら、素のタイマンで決着をつけようやないかい、あほんだらぁ!
「……タイマンはろうや」
「……はい?」
「あれだ……変身とか、コピーとか、魔法とか、スペシャルとか、そういうんを、ちょっと、いったん、なくして……普通に、一回、殴り合おうや。おたがい、一人の男としてよぉ」
そう言いながら、
ザンクは、ソンキーを自分の中から追い出して、
『素の田中ザンク』に戻ると、
「……ビビんなよ、蝉原。ザンクさんが怖いんは分かるけど、そのぐらいの男気は見せてみぃや」
「……ちっちゃい挑発だねぇ……ダサすぎて、吐きそうだ……そんなもんに乗るぐらいなら、死んだ方がマシってレベルなんだけど……はぁ……やれやれ」
しんどそうに溜息をついてから、
自分の中から、『追加要素』を、いったん除外していく。
完全に消去したわけではなく、
いつでも、任意に元に戻れる状態にした上で、
――『素の蝉原』になると、
「程度や品位がどうあれ、『メンツ』を引き合いに出されたら、立場上、どうしても、引くわけにはいかないんだよなぁ。やれやれ……仕方ない……最後のたわむれに、かるく遊んであげる。けど……ちょっとだけだよ」
そう言いながら、蝉原は、握りしめた拳を、ザンクの顔面に叩き込む。
これまでのような、魔力やオーラのブーストがかかった状態ではない。
一般人でも、普通に、目で追える程度の速度で、
蝉原は、ザンクを殴りつけた。
「ぶへぁっ!」
魔力やオーラのバリアなしで、普通にパンチをくらったザンクは、
鼻血を垂れ流しながら、
「ぜ、全然、きかんなぁ」
と、フラつく足を支えながら、
両手の拳を固く握りしめて、
「次は……ザンクさんの番……」
などと言いながら、
蝉原の顔面に拳をたたきつけた。
ガシっと、蝉原の頬の肉が揺れた。
足腰に力が入っていないので、まったくダメージになっていない。
「……満足したかい?」
「……一回や二回の殴り合いで、何がわかんねん……ほら、かかってこいや……それとも、ザンクさんが怖いか? まあ、怖いやろうなぁ。お前は、腰抜けな東京者ばりの、惨めな臆病者。ザンクさんに挑むのは、愚の骨頂。殴られて、意識がスローモーション! 見せろよ、ヤンキーのプロ根性。しょせん、お前に出来る限界は、骨粗鬆症の婦女暴行。イェエ!」
煽りに煽っていくザンク。
そんなザンクの言葉に、蝉原は、恥ずかしそうにタメ息をついて、
「場末の『出来が悪いラップバトル』でも、もう少し、マシなアンサーを返すだろうね」
そう言いながら、
蝉原は、ザンクをボコボコにしていく。
血だらけの、ボッコボコになったザンクは、
全身、激痛の満身創痍になりながら、
しかし、それでも、
「……はぁ……はぁ……おら、どうした……手と足が止まっとるぞ……ビビっとんのか? 情けないやっちゃで。それでも、ヤンキーの王様か?」
「この状況で、何にビビればいいか、教えてほしいところだね。一ミリも分からないから」
「アホには分からんやろうなぁ……」




