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32話 凝り固まる、どこか危さが滲む思想。

 32話 凝り固まる、どこか危さが滲む思想。



 少しだけ周り道したものの、結果的には、

 全てがゴートの望み通り・理想通りに進んでいる。


 『どうやって、己の異常な成長チートを隠そうか』と悩んでいたが、

 気づいた時には、なし崩し的に、最高の形で解決した。


 そして、明確な目標も出来た。

 目標達成のめどもたった。


(問題は全て解決した。ルートも確保。俺は、これからも、UV1の部下として動く)


 偽装という訳ではない。

 UV1を隠れ蓑にするつもりが――まあ、そのつもりが『100%ない』とは言わないが、しかし、それだけが理由ではない。

 一番の理由はそこじゃない。


(もはや、UV1よりも、俺の方が強い、が……これは、そういう問題じゃない。親より背が伸びたからと言って、だから親に対して敬意がなくなる訳じゃない)



 ゴートは、UV1という器を創ったゼノリカという組織を信用する事にした。

 UV1は素晴らしい。

 その素晴らしいUV1が在籍しているゼノリカも素晴らしい。


 もちろん、完全にイコールが成立する訳ではない。

 1+1は2かもしれないが、現実では1にも色々な種類がある。

 そんな当たり前の事はゴートにだって分かっている。

 しかし、いつだって、『繋がりがある』という理屈が事実をつくる。

 それも、またリアル。


(UV1は確かに言った。ゼノリカに属する者なら、誰だって、自分と同じことをする、と)


 信じられない話だ。

 しかし、あの場面で、UV1がゴートに対して嘘をつく理由が、あまりにもなさすぎるというのも事実。

 当然だが、なにもかもに懐疑的であればいいという訳ではない。


(……『イフリート7体を前にして、それでも折れずに歯を食いしばって抗ったUV1の、あの気高き勇気』が、決して『特別なもの』ではなく、ゼノリカに属する者ならば例外なく『誰しもが胸に抱いている基礎的な理念』だと?)


 反芻してみるたび、その異常性の深さを思い知らされる。

 ありえない話だ。

 しかし、


(……もし本当なら、凄まじい組織だ……)


 所属している誰もが、このUV1の様に、

 絶望的な状況下でも勇気を叫べるという、

 ゴートの視点で見れば、夢のような組織。


 夢というか、もはや、ガキの妄想。

 だが――


(もし、全てが本当なら、ゼノリカはとんでもない組織)


 事実なら、理想の平和を体現できる。

 間違いなく、どんな困難にも打ち勝てる。



 ――一つになって、自由になれる――



(UV1ほどの力と覚悟を有した英雄ですら、まだ中枢にはいないという層の厚さ。もし、ゼノリカがUV1の妄想ではなく本物なら……)


 ドクンと胸が高鳴った。


 妄想では終わらない夢のような組織。

 完全平和を成せる世界の中枢。



(支えたい。決して腐らぬように……UV1のような者達だけの組織で在り続けられるように、この俺が……)






 この世界にくる前、ゴートは『恐怖の大王』と闘っていた。

 世界を混乱させることにしか興味がないというイカれた大魔王。

 完全な世界平和を成せる力を持っていながら混沌を撒き散らす、

 あの史上最低最悪のクソ野郎と、魂を削りながら必死に闘った。

 ――あのクズと闘っている間、ゴートはずっと考えていた。



 ――もし、俺が、あのカスと同じ力を持っていたら、何をするだろか――



(あのラリったクズ野郎が最高の反面教師になってくれたから、俺は、己が深層で抱いていた『強固な理念』を知る事ができた。そして、今の俺には、その理念――高次の理想を現実のものにできる力がある……そして、理想実現のために、その力を最大限活かせる組織もある……)


 ゴートは、グっと拳を強く握りしめる。


(俺が、ゼノリカの責任者になる。乗っ取る気はない。俺は別に影でもいい。UV1は光を望んでいるようだが、俺にそういう願望はない。ただ、人類の倫理的完成の近道たる完全組織、その最も重要な歯車として、世界を支えたいだけ……)




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