68話 がんばれ、ボーレ。お前がナンバーワンだ。
本日の2話目です。
68話 がんばれ、ボーレ。お前がナンバーワンだ。
「おそらく、あの勇者はニセモノだ。ゾメガ陛下は、俺達の心を折るために、勇者が参戦していると嘘をついたんだ。どうだ、俺の灰色の脳ミソは! うやまっていいぞ! こうべをたれて、つくばえ!」
「……ニセモノなら、あんたでも対応できるな。よし、あいつを叩き潰してきてくれ、ボーレ先輩」
「それが、持病のヘルニアのせいで、身動きがとれない! というわけで、後輩。お前がなんとかしてくれ」
「いや、ヘルニアごときにあんたは負けない! がんばれ、ボーレ先輩。あんたがナンバーワンだ」
「違うぞ、後輩。お前こそが真のナンバーワン――」
などと、不毛なやりとりをしているバカ二人を尻目に、
リグが、
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」
と、全力の特攻で、ドーキガンに襲い掛かる。
「限定空間ランク15!」
と叫びながら、リグは用意していた魔カードをビリィっと破り捨てた。
その瞬間、
センたちの視界から、リグとドーキガンが消えた。
★
限定空間に閉じ込められたドーキガンは、
自分をここに閉じ込めたリグに対して、
「一人でボクの相手をする気ですか? それは、やめておいた方がいいと思いますが」
と、冷静に、リグとの間合いを取るドーキガン。
そんな彼に、リグは、
「メシア! いいところにきてくれた! 助けてくれ! たのむ!」
「……?」
「俺は北の人間だ! 一緒にいた女もそうだ! 『元ゴブリンの魔人』と『世界を喰らい尽くした邪神』に、理不尽にボコボコにされて、奴隷にさせられてしまった! どうか、俺たちを助けてくれ! お願いだ、メシア!」
「……世界を喰らい尽くした邪神?」
「ああ! あの『目つきが悪いブサイクな魔人』の隣に、『くりんくりんの髪をした、ちんちくりんの女』がいただろう! あいつが、予言の邪神だ!」
「……話が見えてこないのですが……」
「だからぁ! 邪神なんだよぉ! あのロリ女が邪神で! その邪神の力を、あの『目つきの悪いブサイクな魔人』が奪い取った! あいつらはヤバい! あいつらを放置するのは、人類のメシアとして失格だ! 俺も力を貸すから、一緒に、あいつらを滅ぼしてくれ! 頼むぅ!」
切実な願いを叫ぶリグ。
そんなリグを、冷めた目でみながら、
ドーキガンは、
「あの場に、邪悪なオーラを放つ者はいなかったですよ」
「だからぁ! あのゴブリン野郎が、邪神の力を奪い取ったんだ! だから、あのゴブリン野郎は、ゴブリンとは思えないほどの底力をもっているんだ!」
「……それを信じろと言われても、なかなか難しいものがありますね」
「っ……っ! ぐっ……人類の危機なんだぞ! 悠長に構えているひまはない! 俺を疑っている余裕があるなら、あいつらを滅ぼしてくれよ! あんた、人類の救世主なんだろぉ!」
「もし、仮に、あそこにいた二人が邪神と災厄なのだとしても、あの程度であれば、余裕で対処できますので、今すぐに、どうにかする必要性は感じません」




