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5話 夢

 5話


『というか、警察が向いていない。わかっていたさ、最初から。オマワリなんて、趣味じゃない。なんだったら、絶対にやりたくない職業だ。根源的に、公務員は性に合っていない。分かっていた。全部、ちゃんと。……だが、それでも、俺は、国の犬になることを選んだ』


『ははは、そこまで俺は君を怒らせたのか。さすが、俺。ちなみに、実は、あの時のことを、俺は今でも奇妙なくらい覚えているんだよ。俺がふみつけた君の大事なものって、確か、母親のカタミだよね? ハンカチだったかサイフだったか忘れたけど』


『……サイフだ』


『そうだっけ? まあ、そんな細かいところは、流石に覚えていない訳だけど。まあ、そんなことは、どうでもいい。大事なのは、この世で唯一操れない相手が、かつて唯一俺に逆らった幼馴染ってことさ。なんだか、ドラマティックで素敵じゃないか』


『蝉原』


『ん? なにかな?』


『最後の質問をしていいか?』


『いいよ、どうぞ』


『あいつらが、お前に操られていたのかどうかだけ教えてくれ』


『あいつら? ああ、俺対策チームのメンバー? 操っていないよ。これだけはマジ。だって、そんな事したら、いろいろと台なしじゃん』


『そうか……』


『そうかで終わらないでよ。感想をちょうだいよ。どう? どんな気持ち? 普通に裏切られた気分はどう?』


『もし、あいつらが操られていただけなら、もう少しあがいてみようと思ったが……』


『ん? 思ったけど、なに?』






『もう、やめだ』






『……え?』


『お前の能力はチートすぎる。何をしても無駄だ』


『……おやおや』


『お前が相手じゃ、俺一人ではどうにも出来ない。せめて、何人か味方がいれば、闘おうと言う気にもなったかもしれない……もし、あいつらが操られているだけなら、どうにか解除方法を探そうとしたかもしれない、が……』


『……けれど? なに? 最後まで、ちゃんと言葉にしてほしいね』


『諦めた。もう無理だ。この世界は終わった。お前は完全なサイコパスだから、説得も無意味。抵抗も無意味。この世界は、お前に穢されて、狂って、終わる』


 センエースの言葉を聞いて、

 蝉原勇吾は嗤う。


 蝉原はバカじゃない。

 そして、これまでのセンエースの奮闘を知っている。


 だから嗤う。


 『センエースの心を摘んだ』という事実が『いかに誇らしい事』か、

 『異世界の聖典』を読むまでもなく、潜在的に理解できたから。



 ――第一アルファは、センエースを諦めさせるのが得意な世界だって話――



『心の強さは腹筋みたいなもんだってお前の意見には同意する。人の核は弱い。だからこそ、それでも強くあろうとする想いは尊い。だが、ゆえにこそ、長くは維持できない。邪神バグの力に抗えるほど、人は強くない……』


『……』


『……洗脳していいぞ、今ならたぶんできる』


『流石の君も、ついに諦めちゃったか』


『ああ、ムリだ。この絶望は殺せない』


『ははっ、じゃあ、遠慮なく――ん……』


『なんだ?』








『うぷ……う……』








『……どうした、蝉原……ぉい……』


『バ……バグ……ちょっと待っ……なんで……やめ……』


『おい、蝉原! どうし――』


『なんでだ! どうして! やっ、やめろぉおお!! ふざけるなぁああああああああああああああああああ!!』


 蝉原の体がカっと光ったかと思った直後、

 その光は、コスモゾーンの法則に逆らって、

 コンパクト化されることなく際限なく広がっていき、






 ――第一アルファの全てを木っ端みじんに吹き飛ばした――






 すべては一瞬の出来事だった。

 ゲームのリセットボタンでも押したみたいに、ほぼ全ての魂魄が大きな光に飲み込まれ、コスモゾーンにかえっていった――が、


 センの魂魄は、回収される直前、『声』を聞いた。







 ――まるで『夢』。

 幻想。

 何が何だかわからんが……そこから引っ張ってこられるのじゃ……わかるか?

 わからんじゃろう。

 わしにも、わからん!

 しかし、分かる!

 ひひひひひ!

 カツモクせよ!

 わしの全てを注いだ、究極の召喚を、見届けよ!

 さあ、来い!



 ――わしを踏み台にして、こちら側へくるがよい!











 ――よくわかんねぇが、

 ――感謝するぜ。



 ――俺に可能性を残してくれて、

 ――ありがとう。



 ラムド・セノワール。



 ――俺は、お前に、本気で感謝している。

 ――その想いを、だから、俺も、可能性で示そう。









 ――器をなくしたというのなら、

 ――俺が器になってやる。






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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
やっぱりコスモゾーンの法則って他には無い素晴らしい発想だと思います。よく他の小説で実際にそのステータスがあったら周囲の被害が尋常じゃないだろって思ってますがこのシステムなら一気に解決できますからね。
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