最終回 センの闘いはこれからだ。
最終回 センの闘いはこれからだ。
「せめて、こいつらだけは守って死にたい……俺の命はゴミみたいなものだが……せめて、そのぐらいはさせてほしい……」
そこで、センは、
「影牢に関しては調査が終わっている。お前らは、魔人で遊んだことは少ないみたいだな」
他の魔人ハンターは、魔人のことを拷問したり、凌辱したりするのが一般的だが、
ヒエンをリーダーとする影牢は、一度もそういうことをしなかった。
――『だから善』というわけではない。
殺された魔人たちは、普通に、影牢を恨んでいる。
「弱いのも罪だ。この世界に生まれたのであれば、それは受け入れなければいけない。弱肉強食の世界で、一方的な被害者など存在しない。こんな時代にうまれた全員が敗北者だ」
センはそう言ってから、
崩れ落ちているヒエンの前に立って、
「幸せになる方法は知らんけど、これからの『生き方』だけは教えてやるよ。ノコの剣になると誓え。そうすれば、お前らに道をくれてやる」
「……」
「拒絶するなら殺す。大帝国を本気で裏切るのは覚悟が必要だろうが、その覚悟を背負ってこっちにつくのであれば、俺も、雇い主として、お前の罪を一緒に背負ってやる」
「……」
「ようするには、今死ぬか、あとで死ぬか。どっちか選べってことだ。どうする?」
「……」
ヒエンは黙ったまま、
ゆっくりと頷いた。
答えにはなっていないが、顔を見れば、どっちを選択したのかぐらいは分かった。
ブッチが、天を仰いで、
「マジかー……大帝国を裏切って、小国につくとか……バカすぎる……」
ため息交じりにそう言った。
そんな彼女に、センは、
「お前らのリーダーは正解の道を選んだ。すぐにそのことを思い知るだろう。俺はこれから大帝国を完膚なきまでに叩きつぶ――」
と、そこまで言ったところで、
「――セン様」
エキドナの配下をしている忍の一人が、
センの元に駆け寄ってきて、
「――大帝国で、どうやら、大きな異変があった模様です」
そう言いながら、いくつかの資料を差し出してきた。
それに目を通したセンは、
「……はぁ?!」
それまでの余裕が全て吹っ飛ぶ。
そこに記されていた内容は――
「これは……本当か?」
あまりにも想定外の事態に動揺を隠せないセン。
「もうしわけありません、真偽のほどはわかりません。私は、隊長から伝達を任されただけですので」
「……そうか……」
そう言いながら、心の中で、
(……これは……まさか……俺と同じように、『タイムリープの秘術をつかった者』が現れた? 『俺という一例』がある以上、その可能性を否定することはできない……こ、こうなってくると……ここからの大帝国に対する一手は、少し考える必要が……)
と、そこで、センは、
「ごほっ……」
血を吐き出した。
『ノコから奪い取った呪い』は、センの体を、刻一刻と蝕んでいっている。
(……猶予は、そこまで多くないってのに……)
ソデで、口元の血を拭ってから、
(……対応を間違えたら終わる可能性がある……慎重に……だが、大胆に……かなり厳しい状況……)
などと考えつつ、
センは、今後、大帝国に対してどういう手を打っていくかを再考する。
最初にたてていたプランは、いったんすべて破棄。
ただ、テーマと結論は変わらない。
(……必ずノコを守る……ノコの安全だけは絶対に確保してから死ぬ……それまでは死ねない……)
決意を新たにして、
センは、次の一手を模索しはじめる。




